『イルタ・スキャンダル』は異色のロマコメ? チョン・ギョンホがカリスマ性を発揮

『イルタ・スキャンダル』は異色ロマコメ?

 ハンドボール元韓国代表の惣菜屋社長とスター講師の異色ロマンティックコメディ(?)が描かれる、tvN新ドラマ『イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜』がNetflixで配信中だ。

 はじめに映し出されるのは、私教育の聖地・江南の塾街。そして朝から晩まで勉強漬けの学生と教育熱心な親。その母親たちが情報を交換する掲示板名は“SKYママ”だ。母親同士の熾烈な受験戦争がテーマとなった大ヒットドラマ『SKYキャッスル〜上級者の妻たち〜』(2018年〜2019年)が由来しているのはお気づきだろう。というわけで、数学No.1スター講師チェ・チヨル(チョン・ギョンホ)の講義を受けたいという娘のために、惣菜屋社長のナム・ヘンソン(チョン・ドヨン)が私教育の世界に飛び込んだことで2人が繋がっていくのである。

 本作を彩る豊かなキャスティングは抜群の安定感をみせている。ヘンソンの友人であり店で一緒に働くキム・ヨンジュ役には『海街チャチャチャ』のイ・ボンリョン、ヘンソンの娘ナム・ヘイ(ノ・ユンソ)のクラスメイトの母親、いわゆる教育ママたちを、『愛の不時着』のキム・ソニョン、『キム秘書はいったい、なぜ?』のファン・ボラ、『サイコだけど大丈夫』のチャン・ヨンナムが演じている。そしてロマンスコメディに戻ってきた主演のチョン・ドヨンが演じるヘンソンのキャラクターの新鮮さと、チョン・ギョンホが魅せるチヨルのカリスマ性に、第1話からガッチリと心を掴まれた視聴者も多いのではないだろうか。

 パワフルで明るいヘンソンと地位も名誉も手に入れたチヨルの共通点は、“人生に自分がいない”こと。ヘンソンがハンドボール選手としての夢を諦め、自分を顧みずに今日までやってきたのは家族のためだ。きっと本人は自分を犠牲にしたとは思っていない、いや気づかないようにしていたのかもしれない。だから突っ走るしかなかったのだろう。弟のナム・ジェウ(オ・ウィシク)には、たてがみを持ちホルモンが原因で雄のように吠える雌ライオン“ムマモリリ”に似ていると言われる始末だが、彼女が背負ってきた人生の現れでもある。

 一方のチヨルは「イルタ講師(人気1位のスター講師)」と呼ばれ、1兆ウォンを生み出す男だ。しかも安っぽいカリスマ性ではなく絶大な信頼を得ている。学生と真剣に向き合う姿勢は社会が彼の人気を利用する以上の価値があるのだ。しかし学生には温かいイルタ講師は教室を出ると神経質で社員の名前も覚えられないチェ・チヨルになってしまう。特に人間関係には煩わしさを感じているようだ。どんな高級住宅に住んでいても大きくてふかふかなベッドがあっても、結局眠れるのは窮屈な寝袋。彼が求めているのは大きな空間ではなく小さな安心であって、世間が羨む完璧な生活はイコール幸せではない。さらにストレスにより摂食障害を患い、何を食べても吐き出してしまう生活を送る。イルタ講師チェ・チヨルは人間らしさを失った自分が存在しない毎日を生きているように見えるのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる