イ・ジェウクらが駆け抜けた『還魂』が完結! 新たに誕生したファンタジー大作に

イ・ジェウクらが駆け抜けた『還魂』が完結

 全30話の2部構成で配信された『還魂』(Netflixで配信中)がついに完結した。ホン・ジョンウン、ホン・ミランのホン姉妹の軸のブレない脚本に独特な言葉選び、軽快で愉快なセリフの数々。難解なストーリーであってもそれを乗り越えると面白さが倍になり、回を重ねるたびに『還魂』の世界に吸い込まれていったように感じる。多くの視聴者を虜にした本作は、新たに誕生したファンタジー大作と呼べるだろう。

 パート1では天下の影の刺客ナクス(コ・ユンジョン)が盲目のムドク(チョン・ソミン)に還魂し、パート2ではナクスがチン・ブヨン(ユン・へヨン)として戻ってきた。メインキャストの変更に戸惑いの声もあったが、それだけチョン・ソミンが務めたムドク(ナクス)が愛された証であり、コ・ユンジョンが愛すべきナクスを熱演してくれたことによって引き続きパート2にも没頭できたのではないだろうか。チョ・ヨン、ナクス、ムドク、チン・ブヨンをやり遂げた俳優たちと違和感のない繋ぎを散りばめた細やかな演出にも大きな拍手を送りたい。

 最終章では思いがけない事態が次々と起こり、わずかな願いを抱きながら必死に光を探した者がどれだけいただろうか。けれどそこには暗闇を照らす光ではなく、誰もが待ち望んでいたものを届けてくれた。

 200年前にチン・ソルランが「氷の石」に宿り、チン・ブヨンとして転生した理由は、火の鳥によって混乱を招くテホ国を救うため。それを成し遂げるために選ばれ、出会うべくして出会ったのがチャン・ウク(イ・ジェウク)とナクスだった。師弟関係から始まった2人の関係の終止符は、お互いの利益のためではない愛があるから婚姻を結ぶ本物の夫婦だ。けれどウクは絶対的に正しいと言える選択をする。それは愛する人と一緒にいるのでなく、間違った者を阻止するという選択だった。 

 そして若者よりもウブでコントのような恋仲でいつも楽しませてくれたパク・ジン(ユ・ジュンサン)とキム・ドジュ(オ・ナラ)。第6話での「愛する人が危険な扉に閉じ込められて扉を閉めなくてはならない状況で扉を閉じるか、閉じないか」の会話が伏線となった衝撃の反転が訪れる。今まで抜け感を担当してきたベテラン俳優らの全身全霊の演技でこれまでの平和な雰囲気が一掃され、涙なしには観ていられない展開となってしまう。

 「悪はやりたい放題で我が道を行くのに善は絶えず己を証明しなくてはならない」。時に悪は善より最強になる。私欲しかない者には失うものが自分しかいないからだ。だからといって守るべきものがある者が弱いのではない。ウクもジンもただ愛する人を守るための選択をしたのだ。正しい選択ができる者こそが未来を変えられるのである。その結果、“強者が全てを手に入れる世の中”を望んだチン・ム(チョ・ジェユン)が一番の弱い者になってしまう。最も憎まれてきたであろうチン・ムはいなくなった。だが最期の瞬間まで執着した姿を見せ、悪としてすぐにでも生まれ変わってきそうな恐ろしさを残していった。

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