『舞いあがれ!』事務員・山田で思い出す『プラダを着た悪魔』 母を気遣う悠人の一面も

『舞いあがれ!』嫌味な山田の存在感が高まる

 営業をするには、営業する物を理解していなければいけない。『舞いあがれ!』(NHK総合)第73話では、それに気づいた舞(福原遥)が、笠巻(古舘寛治)からネジ講習を受けることにする。そこにめぐみ(永作博美)も加わるが、確かに従業員らが言うように彼女たちがネジについて学ぶ気になったタイミングは、少し遅かったように思える。それでも、今は一つずつやっていくしかない。

 そんな夜、悠人(横山裕)が突然家に帰ってきた。父・浩太(高橋克典)の死に目にも会えず、最後に交わした会話が喧嘩だったことを、彼はやはり気にしているように思える。母・めぐみの様子を「やつれたな」と気にしたり、工場をマンションにする提案をしたり。めぐみや舞にとっては、IWAKURAを残したいという気持ちが先行しているため彼の言葉は冷たく聞こえるが、悠人は悠人でめぐみを浩太の二の舞にしたくない、彼女を一刻も早く楽にしたいのだ。そこに、彼なりの優しさや気遣いが感じられる。仏壇にお供物をすることを拒んだ悠人。彼が今後、どんなふうに岩倉家の一員として動くのか、その心情描写にも注目したい。

 実際、悠人が言うことはいつだって現実的で、的を射ている。半年しかない猶予の中でどれほど社会人1年目の舞が営業で成績を出せるだろうか。それでも諦めず、夜も営業のシミュレーションをする舞。その姿は、どこか航空学校で離陸・着陸のイメトレをしていた時の彼女を彷彿とさせる。彼女が何かを学ぶ時の方法が一貫している描写として丁寧だし、ネジの専門用語が出てきても航空学校であれだけ専門的なもの学んできた彼女だから大丈夫、と思ってしまう。

 ただ、そんな舞の心を揺るがせたのが、隣に座る事務員・山田(大浦千佳)だ。彼女はずっと、舞やめぐみに対して、ネチネチと嫌味を言い続けてきた。そんな彼女に、ふと『プラダを着た悪魔』でエミリー・ブラントが演じていたエミリーを重ねてしまう。

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