『舞いあがれ!』舞の選択は“ヒーローごっこ”か 冷ややかな眼差しの中で踏み出した一歩

『舞いあがれ!』舞が踏み出した新たな一歩

 そんな中、舞は長年の取引先である「カワチ鋲螺」を訪れる。舞はそこで新規の仕事をお願いするも、課長の森本(森本竜一)から「ご自身の会社がどんなレベルの製品だったら引き受けられんのか、ちゃんと理解してはりますか?」と問いかけられ、言葉を失った。

 「カワチ鋲螺」はまだ舞が子供の頃、経営に行き詰まった浩太が新規開拓で訪れた会社。その時、浩太に応対したのも森本だ。当初彼は浩太を追い返していたが、どこの工場にも断られていた特殊ネジの試作を最終的に任せることにした。それは図面とブランクを見せたところ、浩太が自分の工場でできると直ぐに判断したから。今の舞だったら、試作の話を持ちかけられても自分では判断できず、一旦会社に持ち帰るだろう。少しの差が自分の会社を信用してもらえるか、もらえないかに大きく関わる。忙しい中、森本が大切なことを教えてくれたのは、これまでのIWAKURAに対するせめてもの誠意なのだろう。

 舞は森本の言葉をきっかけに、ネジの基本と仕組みから学び直すことを決めた。そんな彼女に周りの社員たちは冷ややかな眼差しを向ける。まるで針のむしろだ。しかし、舞はそれを気にする様子はなく、めぐみもただそんな娘を見守っている。簡単に自分たちの決断を受け入れてもらえないことは二人とも覚悟していたのだろう。

 味方が一人もいないわけではない。ベテラン職人の笠巻(古舘寛治)は何も言わずとも、めぐみと舞を気にかけてくれている。“ばんば”こと、祥子(高畑淳子)も舞の決断を「よ〜く決心したねえ」と温かく受け止めてくれた。そんな祥子から、舞は五島にしま留学中の朝陽(又野暁仁)が星空クラブの友達から誘われ、学校へ通うことに前向きな姿勢を見せていることを聞き、励まされる。

「なあ、お母ちゃん。これから忙しなるやろうけど、晩ご飯は一緒に食べよな」

 まだまだ胸が苦しくなるような状況は続いているが、舞とめぐみが囲む食卓には笑顔がある。二人もまた、朝陽と同様に少しずつでも前に進んでいると信じたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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