2022年の年間ベスト企画
宇野維正の「2022年 年間ベスト映画TOP10」 「ハリウッド映画の終焉」に向かって
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2022年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、映画の場合は、2022年に日本で公開された(Netflixオリジナルなど配信映画含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第15回の選者は、映画ジャーナリストの宇野維正。(編集部)
1.『リコリス・ピザ』
2.『わたしは最悪。』
3.『カモン カモン』
4.『その道の向こうに』
5.『アテナ』
6.『グレイマン』
7.『THE FIRST SLAM DUNK』
8.『NOPE/ノープ』
9.『線は、僕を描く』
10.『パラレル・マザーズ』
2010年代を通して高みに上り詰めてきたマーベル・シネマティック・ユニバースの映画作品は、ディズニープラスでのテレビシリーズの粗製濫造にも足を引っ張られて急速に求心力を失い、2010年代を通してあれだけ大盤振る舞いをしてきたNetflixは、1月と4月の二段階の株価暴落を経て途端に「選択と集中」を加速させるように。気がつけば、毎年楽しみにしていたNetflixの年末社会時評コメディ「Death to」シリーズも今年は当たり前のように消滅していて、2020年代に入ってからの映画界の構造変化についての新著を執筆中の身としては状況が激変しすぎてたまったもんじゃない1年だった。
強い意志と意図を持って映画とテレビシリーズの壁を取り払ってすべての作品を対象としているYouTube「MOVIE DRIVER」での上半期ベスト(年間ベストの動画も来年1月に配信します)や、信じがたいことに未だ配信作品を排除するというレギュレーションでおこなわれている既に投票済の『キネマ旬報』のベスト・テンなどとなるべく矛盾しないように選んだのが上記の10作品。内訳はアメリカ映画が5作品、ヨーロッパ映画が3作品、日本映画が2作品。劇場映画(7作品)と配信映画(3作品)のバランスは2022年の映画界の現状をふまえてこのくらいが妥当だろうという自負があるが、アメリカと日本以外の国の作品に関しては取りこぼしている作品もあるだろう。これは開き直りではなく、映画と並行してテレビシリーズを追っていれば、たとえ専業の書き手であっても1人の人間には限界がある。
本稿でキャプチャーしきれていないインド映画や韓国映画、そしてもしかしたらそれ以上に日本のアニメーション映画は、各国の映画祭や映画賞だけでなく、北米のボックスオフィスにおいてでさえ、今後ますます存在感を高めていくだろう。歴史上、ハリウッド映画がここまで衰退した時代はなかった。確かにトム・クルーズは映画の救世主で、2022年の『トップガン マーヴェリック』に続いて、きっと2023年も『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は世界中で大いに盛り上がるのだろうが、たとえトム・クルーズであっても1人の人間には限界がある。