岸井ゆきの、磯村勇斗、笠松将ら“92年生まれ俳優”最強説? 大きな壁をどう超えるか

岸井ゆきの、磯村勇斗、笠松将ら92年俳優

 スポーツや音楽だけでなく、どんな世界にも「黄金世代」というものが存在する。もちろん、そこに当てはまる人々の“年齢”と個々の“功績”にはほとんど関係がないだろう。けれどもなぜか、名実ともに抜きん出た者たちがズラリと並んでいる世代というものがあるのが事実。この2022年に30歳を迎えた“1992年生まれ世代”には、そんな俳優たちが何人もいる。特に目立つ存在であった岸井ゆきの、磯村勇斗、笠松将らにスポットを当て、1992年生まれの俳優たちを俯瞰視してみたい。

快進撃が続いた岸井ゆきの

『犬も食わねどチャーリーは笑う』©︎2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

 ヒロインを務めた日曜劇場『アトムの童』(TBS系)が好評のうちに終了し、その熱が冷めぬまま、主演映画『ケイコ 目を澄ませて』が封切られた岸井ゆきの。前者で演じたのは大きな危機に直面する玩具店の社長で、後者で演じたのは聴覚に障害を抱えるプロボクサーである。一方は分かりやすい展開が続くテレビドラマであり、もう一方は多くの映画ファンに支持される三宅唱監督の待望の最新作。この2作はまったく毛色の異なるものだが、放送・公開のタイミングが前後していたことで、特別な関係を築いていると思う。『アトムの童』で演じたのは一般企業の社長であり、その情熱的なキャラクターは“動的”なものだが、劇中に見られる振る舞いは“静的”なものだった。対する『ケイコ』で演じるタイトルロールのケイコは役の設定上セリフがほとんどないため、(内に秘めた情熱はあるものの)表面的には“静的”なキャラクターであり、ボクシングに打ち込む姿は圧倒的に“動的”だといえるものだ。岸井が演じたキャラクターはそれぞれ対極にあり、演技のアプローチも真逆。この俳優としての器の大きさは、彼女が非常に信頼できる存在であることを端的に示していると思う。今年は主役級の役どころを務めた映画が何本も公開されたことに加え、ドラマにも舞台にも出演していたが、この12月で岸井は自身の地位を不動のものにしたのではないだろうか。

どこを見ても磯村勇斗!

『さかなのこ』©︎2022「さかなのこ」製作委員会

 岸井ゆきのと同じように、エンタメ界における自身の重要度を示したのが磯村勇斗だ。2021年は大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)の出演をはじめ、映画『東京リベンジャーズ』に舞台『泥人魚』など、幅広くいくつもの話題作に顔を見せた彼だが、この2022年はその比ではなかった(むろん、彼の出演作の質のことを言っているわけではない)。映画『前科者』で幕を開け、『ホリック xxxHOLiC』『異動辞令は音楽隊!』『さかなのこ』などの出演作が公開されたほか、重要人物を演じた『PLAN75』は日本のみならず海外でも評判を呼んでいる。また、『ビリーバーズ』では長編映画初主演を果たした。非常に怪しげな宗教団体に所属する若者に扮し、理性と本能に葛藤するさまを体現。豊富なキャリアを持つ磯村に対し、“これが”映画初主演というのは意外だったが、“これで”映画初主演というのも意外だった。そこからは磯村の俳優業に対する冒険心がうかがえるし、その作品選びのセンスに掴みどころがない印象も受ける。俳優に大切なのは、そんな“掴みどころのなさ”だといつも筆者は思う。いずれにせよ、映画ファンにとって磯村はなんとも頼もしい存在だろう。この年末には、途中参戦した『今際の国のアリス』シーズン2(Netflix)の配信がスタートし、作品の看板を背負う『サ道 〜2022年冬〜』(テレビ東京系)も放送。ここまでに挙げた作品の並びからして、彼が高い柔軟性を持つ俳優であることは明らかだ。無双状態は2023年も続くのではないだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる