浅香航大が俳優を続ける理由 選択する上で大切にしているのは“悩むこと”
テレビから映画、コメディからシリアスな役に至るまで、一つのイメージにとどまらない姿を見せてくれる浅香航大。2クールで描かれる『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系、以下『きみセカ』)の地上波放送回では、強い正義感を軸に持った自衛官・桑田役を演じ、ますます注目を集めている。
その後、HuluでSeason2が配信されている『きみセカ』の桑田の活躍、生存確認も気になるところだが、浅香はHuluで配信中のHuluオリジナル『THE LIMIT』にも出演中。今回、ワンシチュエーションドラマへの挑戦や浅香なりの“自分を表に出していく方法”について話を聞いた。(編集部)
役者の技量が問われた『THE LIMIT』
――まずは、企画を聞いた時の気持ちを教えてください。
浅香航大(以下、浅香):リアルタイムに進行する物語で、ワンシチュエーションで、しかも出演者は2人だけ。最初に企画書を読ませてもらった時には、挑戦状を突きつけられた気持ちでした。他の映像は挟まず、本当に2人の会話だけで見せるというのは、役者の技量が問われる気がしましたね。しかも、お相手が木野花さんという尊敬する大先輩。プレッシャーも感じましたけど、2人芝居をやらせてもらえることは、すごく贅沢だなと。それに、とにかく脚本がおもしろかったので、是非チャレンジしたいなと思いました。
――「ここを軸に演じていこう」というプランはありましたか?
浅香:木野さん演じる女性に心を動かされていく様子を、リアルでありつつ、ドラマチックに表現することを意識しました。どこまでドラマチックにやるかを監督とも相談して、バスに乗るところから最後のシーンまで、主人公の気持ちの流れを繊細に作り上げましたね。観る方をミスリードしなきゃいけないけど、やりすぎてもよくないし、その微妙で細かな線を辿っていく作業のように感じました。
――実際に撮影を行った感想は?
浅香:最初に、外の風景がすべてLEDのパネルで、バスが一切動かないことに驚きました。「ハリウッドスタイルですね」って(笑)。実際には動いていないのに、風景に酔うような感覚もありましたね。あとは何より、木野さんとの2人芝居だったので、常に緊張感がありました。2日で撮ったんですけど、ずーっと緊張が途切れなかったです。
――あらためて、木野さんとのお芝居はいかがでしたか?
浅香:いやぁ、楽しかったですね。木野さんは演出もされる方なので、たとえば僕の回想にしか出てこない人物についても、本当に細かいディテールまで考えていらっしゃるんです。リハーサルの時に、木野さんがいろいろとアプローチしてくださったことで、すごく役が膨らみました。「そんなところまで追求するのか」と思うような作品作りは刺激的でしたし、そこに救われた部分もありました。
――浅香さんにとって、成長できる現場だったんですね。
浅香:そうですね。あとは単純に、今までで一番の長ゼリフを経験できたことも大きかったです。他の場面は結構カット割りも多いんですけど、監督から「そのシーンだけは1回でいきたい」と注文がありまして(笑)。15分くらいずっと1人で喋っていました。あれを乗り越えたことが経験値になったし、ちょっと心臓が強くなった気がします(笑)。
――15分はすごいですね。すぐにOKが出ましたか?
浅香:セリフが抜けちゃったり、カメラが揺れちゃったりして、結局3回やったのかな? それでも2時間くらいかかりますからね。でも、本当はもっとやるかなと覚悟していました(笑)。撮影の2週間前からは、他の仕事をしていてもこの作品のことが頭から離れなかったくらい、相当準備はしたんですよ。木野さんの長いセリフに、僕が一言だけ挟むシーンもあったので、そこは絶対に失敗できないという緊張もあったりして(笑)。もちろん木野さんは大先輩ですけど、一緒に戦ったような感覚でした。
――完成した映像をご覧になっていかがでしたか?
浅香:良い意味で監督が遊んでいるというか、チャレンジングだなと思いました。カット割りとアングルが印象的で、地上波のドラマとは全然毛色が違いますよね。「そこに入るの?」と思うようなカットも多いし、「もうちょっと2ショットの2人芝居をゆっくり観たいのに」みたいな違和感も積み重なっていく。でも、それが僕の長ゼリフとか、途中の印象的なカットに繋がっていったりもするので、おもしろくて、不思議な作品だなと思いました。