『ぼっち・ざ・ろっく!』にはバンドマンにしか分からないエモさがある

バンドマン目線の『ぼっち・ざ・ろっく!』

 「バンドって結構複雑で一筋縄では行かない」という感覚を教えてくれるアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』が最終回を迎える。本作は、いつかバンド活動することを夢見るも、友達がおらず、中学の3年間ただひたすらに1人でギターを練習し続けて来た主人公の後藤ひとりが、ひょんなことからガールズバンドに参加し、バンドマンとして活動していくストーリー。

 登場キャラクターの苗字がロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のメンバーから取られていたり、各話タイトルがアジカンの楽曲タイトルをもじったものだったり、楽曲制作に人気バンドのメンバーが参加していたりと、邦楽ロック好きにはたまらない要素が満載だ。しかし、本作をより面白くしているのは「絶妙なラインで表現されるバンドや音楽についてのリアリティさ」にある。

ぼっち・ざ・ろっく!

 主人公のひとりは中学生の3年間、1日6時間の練習を毎日欠かさずおこなっていた。ギターの腕前はかなりのもので、動画投稿サイトに「弾いてみた」動画を投稿しており、ネットでは人気者だ。しかし、テンポを一定に出し続けるクリック(メトロノームのようなもの)や打ち込みで制作された音源に合わせてギターを弾くことと、生身の人間がリズムを刻むバンドでギターを弾くことは全くの別物だ。そのため第1話の時点でメンバーから「下手」だと言われている。しかしこれはひとりがギター演奏が下手なのではなく、演者のいるバンドで演奏することが下手だという意味であることは、のちのち作中でも描かれる。

ぼっち・ざ・ろっく!

 このように、本作には「バンド活動をする上でぶち当たりがちな壁」が1人で音楽活動をしていた主人公を通して描かれている。特に観客のリアルな反応が返ってくる“ライブ”という場において、何を思い、何を考えて演奏をすると相手に届くのかを巧みに描いたのが第5〜6話だった。第5話ではひとりたちのバンド「結束バンド」がライブ出演をかけてオーディションに挑むこととなるが、オーディション当日までひとりは「なぜ自分はバンドをやりたいのか? なんのためにやるのか?」を自問自答し続ける。それまで自分のためだけに演奏してきたひとりは、外へ向けて音楽を演奏するバンドという形を掴みきれていなかった。バンドというのは1人では決して成り立たず、メンバーそれぞれが楽器を演奏し、それぞれの想いがあってこそ成立する。

ぼっち・ざ・ろっく!

 そういう、目には見えないけれど活動をしていく上で絶対に欠かせないものに少し気付けたひとりが、初めて自分のギター演奏に気持ちを乗せられたのが第5話だった。その後の第6話ではライブのチケットノルマを達成するために成り行きで路上ライブすることになるが、今度は人前で演奏する際に重要な「聴いてくれている人に演奏を届けること」を学ぶことになる。

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