『まんがタイムきらら』系アニメは第1話の演出が秀逸 夢に目を輝かせる少女たちが心を掴む

『まんがタイムきらら』系アニメの魅力

頑張る少女たちを原点から見守る楽しさ

 10月期アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の放送がスタートした。本作の原作は、漫画雑誌『まんがタイムきららMAX』(芳文社)にて連載中の4コマ漫画。友人のいない主人公・後藤ひとりが音楽を架け橋に仲間との交流を深めていく青春ストーリーだ。第1話では下北沢SHELTERをイメージしたライブハウス・STARRYでの初ライブのシーンが放送され、一歩外に踏み出したひとりの背中を押したくなるような物語の幕開けを見せた。

 姉妹誌を含む『まんがタイムきらら』原作(以下、『まんがタイムきらら』と総称)のアニメには『ゆるキャン△』『NEW GAME!』『ごちうさご注文はうさぎですか?』『けいおん!』などがあり、いわゆる“可愛い女の子が頑張る姿を描く”ものが人気の形式として確立されている。

 それぞれ「キャンプ」「ゲーム制作」「喫茶店」「バンド」と作品テーマは違えど、個性豊かな女子メンバーとの交流によって主人公が自らの居場所を得ていく過程に心を打たれるファンは後を絶たない。

 『まんがタイムきらら』原作アニメの魅力の1つとして挙げられるのは、作風としてはきちんと青春ものとしての純度の高い熱を携えているにもかかわらず、不思議とキャラのゆるさが絶妙にマッチしている点だ。ギャグテイストな会話のやりとりを挟みながら、目標へとひたむきに頑張る少女たちの姿に、気づけば虜になってしまっている。

 他のアニメ作品と同様に、それぞれの作品に心躍らせる「神回」と呼ばれる場面はある。しかし、『まんがタイムきらら』原作のアニメにおいて、筆者は特に第1話の演出が非常に秀逸だと考えている。

 『NEW GAME!』の青葉の入社日のワクワク感や、『ゆるキャン△』の初キャンプに目を輝かせるなでしこなど、最終話まで観た後に振り返ると思わず感慨深さすら感じるような初々しさが、ますます彼女たちを輝かせる。ストーリーが進むにつれて出会うキャラの濃いメンバーたちにも、それぞれ同じ目標を見据えたいと願う理由やきっかけがあるところも良い。

 夢や目標に向かって頑張るとき、誰しも最初は初心者だ。だからこそ、過去に目標に向かって突き進んだ経験のある人ならば、アニメの中の少女たちが頑張る姿につい昔の自分を重ねて応援したくなるはずだ。

 このような『まんがタイムきらら』原作アニメの、夢を追う少女たちのスタート地点の丁寧な描写が、複数の作品に共通するヒットの鍵となっているのではないだろうか。

 ただ少女たちが頑張るだけではなく、彼女たちにとってかけがえのない居場所がゼロから生まれていく光景を見届けている感覚こそが『まんがタイムきらら』原作アニメが人々の心を掴んで離さない所以だろう。

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