『舞いあがれ!』『ばらかもん』が描く五島の日々 若者の移住先として人気の理由

『舞いあがれ!』五島が移住に最適な理由

「(舞ちゃんは)こん島で元気になったとやもんね」

 舞(福原遥)が博多エアラインに採用された『舞いあがれ!』(NHK総合)第56話。吉報を受け取った五島の人たちは、子供時代の舞(浅田芭路)をしみじみと思い出す。失敗を過度に恐れ、何事にも臆病だった舞が人力飛行機や旅客機のパイロットにまで自ら挑戦できるようになったのは、紛れもなく五島での日々があったからだ。

 大小152の島々が連なり、長崎県の西海に浮かぶ五島列島。豊かな自然環境と文化的遺産を有する離島として全国から観光客が集まる一方で、生活インフラや教育環境も整っていることから移住を希望する人も多い。

 なんと、五島市は4年連続で200人以上の移住者を受け入れているそう(※)。特に近年は若者世代の移住先として人気で、『田舎暮らしの本』(宝島社)が発表する「2022年版 住みたい田舎ベストランキング」では、人口3万人以上5万人未満のまちグループの2部門(若者世代・単身者が住みたいまち/子育て世代が住みたいまち)でトップ10入りを果たした。

 常にゆったりとした時間が流れていて、人もおおらか。あくまでもフィクションとはいえ、幼い頃の舞だけでなく、幼なじみである貴司(赤楚衛二)の心をも癒す理由がよく分かる。そこにはいつも、「よかよか」と他者を受け入れ、見守る温かな眼差しが存在しているように思うのだ。

 2014年に放送されたTVアニメ『ばらかもん』でも、人生に迷った主人公の半田清舟が五島を訪れる。半田はかつて若き新鋭として名を馳せた書道家。しかし、書道界の重鎮に自分の字を酷評され、思わず殴ってしまったことで、頭を冷やすためにも東京から遠く離れた五島でしばらく暮らすことに。彼は23歳でもういい大人だが、どこか昔の舞と重なる部分もある。

 それは、親の顔色を伺ううちに、自分の気持ちを抑える癖がついてしまったところ。舞が母・めぐみ(永作博美)に心配をかけないように失敗しない道ばかりを選んでいたのと同じく、半田も書道家である父親が納得するような綺麗で“行儀のいい字”しか書けなくなってしまっていた。そんな半田を変えるのもまた、五島の人々だ。特に大きいのは、“ばらかもん(元気者)”という言葉を体現する7歳の少女・琴石なるの存在。彼女が自分の殻に閉じこもる半田を半ば強引に外へ連れ出し、次々と新しい世界を見せていく。いわば、舞にとっての一太(野原壱太/若林元太)である。

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