『PICU』無力感に苛まれる吉沢亮に届いた一通の手紙 北海道に与えられた最後の試練
“神は乗り越えられる試練しか与えない”―この言葉がこれっぽっちも慰めにならず、むしろあまりに残酷な響きを伴う過酷な状況に見舞われる『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)第10話。
「医者としても息子としても母に何もしてあげられなかった」「何に向かって働いていけばいいのか、何に向かって生きていけばいいのかわからない」と涙ぐむ“しこちゃん先生”こと志子田(吉沢亮)は、母・南(大竹しのぶ)亡き後、抜け殻のようになってしまう。そんな志子田に“生きている”という実感と医師としての使命感を再び蘇らせたのは、他でもない彼自身がこれまで医師として諦めずに向き合い続けてきた命だった。
まずは、第1話でPICUに搬送されるも助けられなかった鏡花(磯村アメリ)を通して出来たご縁が今なお続いている稚内の山田医院院長・山田(イッセー尾形)。医者として患者に何もしてあげられることがないと自身の存在意義が揺らいでいた志子田に「君は子どもが心配でここまで来たんだ。立派な医者だよ」と、使命感や目的、理屈など頭で考えるよりも先に“病人がいれば放ってはおけない”と身体が勝手に動いてしまう、もっともっと根源的な彼の中に既に備わっている医師としての宿命と、命への尊厳を思い起こさせた。それはドクタージェットの件で科長の植野(安田顕)とそりが合わない札幌共立大学病院・救急科科長の渡辺(野間口徹)が、“具体的な患者の話となれば、そんな敵対関係なんて飛び越えて協力体制を敷く“と当然のように言ったように。
そして、膵臓癌発覚後、治療を拒む南に対して何もできなかったという無力感に苛まれ続けていた志子田の元に、どんな状況下でも生きることを諦めない圭吾(柊木陽太)からの便りが届く。圭吾は志子田がいる丘珠病院に戻りたいのだと言い、「やれるから。連れて帰って。俺、絶対死にたくない」とはっきりと口にした。PICUに運び込まれてきたときから人一倍大人びていてお察しの良い圭吾にはきっといろんなことが見えているだろうし、自分の状況だってわかりすぎているくらいに把握できてしまっているのだろう。それでも諦めることを選ばない圭吾の気高さや強さには本当にハッとさせられる。そんな彼の意志の力が通じたのか、感染症の原因は依然不明ではあるものの炎症が消え始め、補助人工心臓の植え込み手術ができる可能性が浮上した。まさに“奇跡”が起きたのだ。志子田はそんな彼から一切目を背けず「これで最後にするからね。圭吾くんをちゃんと治してもうここに戻ってこなくていいようにするから」と言い、真正面からその責任を担った。同級生の優里(稲垣来泉)にもう「先生の嘘つき」なんて言わせてしまわなくていいように。