若村麻由美も強烈な存在感 イッセー尾形、豊川悦司ら朝ドラを盛り上げる“名物師匠”たち
朝ドラにはいくつかの“あるある”と言える定説が存在している。それが最初に描かれる恋物語はほぼ綺麗な形で実らないこと。そして、物語序盤にヒロインの師匠的存在が登場することだ。
近作では、『スカーレット』(NHK総合/2019年)で喜美子(戸田恵梨香)の師匠となる信楽焼の火鉢の絵付け師・フカ先生こと深野心仙(イッセー尾形)が当てはまる。
「ええよぉ」を口癖に、捕らえどころのないユーモラスな人物で、喜美子を大いに戸惑わせるが、心の中には創作への強い思いが秘められていた。一点ものの芸術品を作るのではなく、皆が喜ぶものを作る職人。喜美子がフカ先生の弟子になると決めたのは、戦争の体験から絵を描けることの幸せ、喜びをその笑顔で、その踊りで力一杯に体現していたからだ。喜美子も参加した深野組は解散となるが、彼の精神は朝の体操とともに喜美子への受け継がれていった。また、師匠というよりは“大阪のお母さん”的存在であるが、荒木荘の女中としてノウハウを喜美子に叩き込んだ大久保のぶ子(三林京子)も厳しい愛情表現を持って喜美子を育てた師匠とも言える。
『半分、青い。』(NHK総合/2018年)では、鈴愛(永野芽郁)の漫画の師匠となる秋風羽織(豊川悦司)がいた。その強烈な個性で好評を博し、単行本『秋風羽織の教え 人生は半分、青い。』(マガジンハウス)まで発売された人気キャラクターだ。傲慢で傍若無人な性格から度々、鈴愛と衝突を起こすものの、漫画への情熱と仕事に対する真摯な姿勢、鈴愛を始めとする弟子たちへの深い愛情は多くの視聴者の心を掴んだ。
「回り道も、あっていい」「明日を生きるんだ」「鈴愛、恋をしろ」。多くの名言を残す一方で、そのコミカルな言動も彼の特徴の一つ。鈴愛を弟子にするもともとの目的だった五平餅への執着や感情が高ぶると出てしまう河内弁など。大人と子供(っぽい)の両面を持ち合わせているところは、フカ先生と似ている部分かもしれない。
そして、現在放送中の『おちょやん』(NHK総合)でも、千代(杉咲花)にとって師匠となる存在が登場した。女座長の山村千鳥(若村麻由美)である。