どこかで必ず見たことのある名脇役・矢柴俊博 『相棒』『祈りのカルテ』で発揮した二面性
現在放送中の『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録 』(日本テレビ系)に諏訪野(玉森裕太)の義父・幸一役で出演している矢柴俊博。『NICE FLIGHT』(テレビ朝日系)に引き続き、玉森裕太と2クール連続で共演を果たしたことも話題なった。老若男女を問わず、きっと誰もがどこかでみたことのある名バイプレイヤー、矢柴俊博に注目してみたい。
矢柴は笑顔のパパやサラリーマン役など、“ごく普通の人”がハマる一方で、議員や医師、弁護士など知的な職業の役も多く、多種多様な役を演じわけている。
矢柴は、早稲田大学在学中に演劇サークル「劇団森」、パントマイム集団「舞夢踏」で俳優活動を始め、1994年に劇団森出身者を中心に演劇企画ユニット「CAB DRIVER」を結成。その後、2000年に自身が演出・主演した『七分袖、ほくろ。』がパルテノン多摩小劇場フェスティバルでグランプリを受賞した。学生演劇から劇団を立ち上げた、ゴリゴリの演劇人なのが伺える経歴だ。
ドラマでは、2005年の『電車男』(フジテレビ系)での和服を着流した文学オタク・川端やすなり役で注目を集め、『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)をはじめ、挙げればキリがないほど多くの話題作に出演した。メインの芝居は邪魔せず、短い時間で存在感は示していく。無駄を排除して役になり切る演技力もそうだが、笑顔になれば人の良さそうな柔和な面立ちが、笑顔が消えた途端、神経質そうに見えて知的さや怖さにもつながる。そんな色白の顔が、バイプレイヤーとして様々な役が与えられる最大の武器ではないかと考える。
柔和な顔でいえば、『きのう何食べた?』(テレビ東京)の富永役は、史朗(西島秀俊)がゲイと知っても何の偏見もなく受け入れ、興味津々に質問しながらも下世話さを感じさせなかったのは、矢柴のホンワカとした雰囲気があってこそだ。
しかし、この柔和な顔から笑顔が消えたときの無機質さが、怖さや変態性を増長させる。『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)では、女性癖が悪く暴行被害者をもみ消してきた議員、『仮面ライダーリバイス』では、温厚な常連客を装い、主人公たちを監視する敵組織の人物など、“普通”ができるからこそ、それを裏切っていく面白さがある役者でもある。
そんな矢柴の無機質さが最大限に活かされたのが、『相棒 season21』(テレビ朝日系)の第4話だ。矢柴は、「遺書」と書かれた封筒とロープを手にした男として登場。とにかくバーのカレーを食べたいこの男・堂島に何があったのか。なぜカレーを食べたいのか。1時間通して、右京(水谷豊)と亀山(寺脇康文)が追求していくというストーリーだ。