『鎌倉殿の13人』源頼家と重なる公暁の失望の眼差し 惨劇へのカウントダウンが始まる

『鎌倉殿』頼家と重なる公暁の失望の眼差し

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第43回「資格と死角」。修行を終えた頼家(金子大地)の遺児・公暁(寛一郎)が、鎌倉殿となることへの強い意志を胸に宿しながら、6年ぶりに鎌倉に帰ってきた。そんな公暁は源実朝(柿澤勇人)から養子の話を聞かされて驚愕し、話が違うと憤る。

 第43回では実朝の将軍後継が後鳥羽上皇(尾上松也)の皇子・頼仁親王に決まる。実朝を大御所にというのは、政子(小池栄子)の発想だった。政子は、京から養子を取ることで御家人同士の無駄ないさかいがなくなると考えていた。しかし、いさかいをなくすための考えそのものが、公暁の憎悪をたぎらせるきっかけとなる。

 寛一郎演じる公暁の堂々とした佇まいと凛とした眼差しは頼家とよく似ている。公暁と顔を合わせた義時(小栗旬)も「物おじせぬ様子が頼家様を思い出すな」と言っていた。そんな公暁は政子と対面し、「立派な鎌倉殿になる所存です」と意気込んでいた。時が違えば、公暁の積極果敢な様子は好意的に受け入れられていたかもしれない。公暁は何も知らされぬまま実朝と対面し、養子の話を聞いた。実朝の前で激高することはなかったが、三浦義村(山本耕史)の前で「話が違う!」と声を荒らげる姿もまた、激怒する頼家に似ていた。

 千日参籠に入った公暁だが、彼は祈願を中断して跡継ぎについての話し合いに加わった。公暁は養子の件を差し戻そうとする義時や実朝の言動に不満を抱く実衣(宮澤エマ)が口を挟む様に注意深く目を向ける。だが、鎌倉殿の跡を継ぐのは公暁でも実衣の息子・阿野時元(森優作)でもない。実朝を説き伏せると約束したはずの義村が、上皇の皇子が鎌倉殿を継ぐことに「御家人たちも皆喜ぶと思います」と歓迎の意を表すと、公暁は鋭い目つきで義村を睨みつけた。義村を睨みつけた後、視線を行き来させる公暁の目には微かに涙が浮かんでいて、戸惑いと苛立ちが感じられた。

 公暁は再び千日参籠に入ったが、祈願に専念できない。またも中断し、義村を呼び寄せた。義村によって父・頼家の死の真相が明かされたとき、公暁はふと幼い頃の記憶を思い出す。変わり果てた姿の比企尼(草笛光子)が目の前に現れ、「北条を許すな」と呪文のように繰り返していた。公暁を焚きつける義村を前に、彼は立ち尽くす。茫然としているようにも見えるが、鎌倉殿になる芽を摘まれたこと、父を殺されたことへの絶望、そしてそのことへの怒りが込み上げているようにも見える。

 頼家も公暁も、絶望と怒りに翻弄されるキャラクターといえる。若くして2代目鎌倉殿となった頼家は感情がたかぶりやすい人物だった。頼家に比べると、公暁は若くして仏門に入っただけあり、突発的に感情をあらわにすることは少ない。しかし公暁が「許せぬ」と口にしたとき、その響きは静かだったが、腹の底で怒りが煮えたぎる様が感じられた。物語の終わり、儀式を執り行う実朝を物陰からじっと見る公暁の目は失望に満ちていた。その眼差しにどことなく悲愴感を覚えるのは半年後に起こる惨劇の予感からだろうか。

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