『鎌倉殿の13人』源頼家と重なる公暁の失望の眼差し 惨劇へのカウントダウンが始まる

『鎌倉殿』頼家と重なる公暁の失望の眼差し

 公暁の心情は見ていてつらいものがあったが、その一方で、鎌倉を引っ張っていく覚悟を決めた政子の立ち回りには心打たれるものがあった。政子は上洛し、院御所で後鳥羽上皇の乳母・藤原兼子(シルビア・グラブ)と対面する。一言一言、相手の心を読むようにして繰り広げられる対話には強い緊張感が漂っていたが、政子は兼子の強い言葉に動じず、兼子を持ち上げつつもへりくだらず、そして機を捉えると兼子の心をくすぐった。政子が「鎌倉挙げて最高の礼を尽くしたいと考えております」と伝えたとき、兼子は「あら」とまんざらでもない顔を見せる。政子が兼子の心を掴んだことの表れだった。

 かつて政子は頼朝(大泉洋)とともに上洛したとき、丹後局(鈴木京香)からきつい洗礼を受けている。兼子の心を掴むことができたのは、大江広元(栗原英雄)から談判をうまく運ぶコツを助言されたこともあると思うが、丹後局による洗礼や激動の鎌倉を生き抜いてきた経験あってのことだろう。兼子は笑顔で「お近づきのしるしに、いかがですか」と政子を酒に誘う。兼子は政子を気に入ったようだ。

 政子は従三位に叙された。鎌倉へ戻ってきた政子は実朝の前で「従三位」と茶目っ気たっぷりに言ってみせた。実朝に駆け寄り、少女のように無邪気に笑う政子の姿に、征夷大将軍となった喜びに表情を崩す頼朝と一緒になって喜びを分かち合う政子の姿を思い出した。政子は立場上、感情をグッと抑えることが多いが、元来感情豊かな人物だ。肩の荷が降りたのか1人、大の字になって寝転ぶ政子もまた愛らしかった。鎌倉を引っ張っていく覚悟を決め、さまざまな顔を巧みに使い分けるようになったとも言えるかもしれないが、政子の立ち回りは目覚ましいものだった。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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