趣里、“2世女優”のレッテルを跳ね返した表現力 朝ドラ『ブギウギ』では歌声と踊りに注目

趣里、『ブギウギ』では歌声と踊りに注目

 中でも忘れがたいのが、映画『生きてるだけで、愛。』で趣里が演じた主人公の寧子だ。躁うつの症状を抱える彼女は自分の感情をコントロールすることができず、バイト先のトイレに立てこもったり、夜の街を下着姿で失踪したりと突拍子もない行動に出る。それでも趣里の一挙一動から声にならない悲痛な叫びが聴こえてきた。趣里自身が“2世女優”というレッテルを実力で跳ね返してきたように、彼女が演じる役もどこか簡単に規定されることを嫌う。意味ありげな佇まいで私たちを惹きつけ、最後に想像もつかない形で心を揺さぶってくる。

 現在放送中のドラマ『サワコ 〜それは、果てなき復讐』(BS-TBS)ではラブホラーサスペンスという新たなジャンルに挑戦し、妖艶な魅力で周囲の人間関係を破滅に導いていく主人公を演じている趣里。難役も見事にこなし、彼女の実力は誰もが知るところとなったが、朝ドラヒロイン決定の報が出る前日の10月16日に放送された『ボクらの時代』(フジテレビ系)では、「まだまだこんなもんじゃない! って思っちゃう」と未だ満たされぬ仕事欲を明かしていた。その華奢な身体からどれだけのパワーが眠っているのかと度々驚かされる。

 そんな趣里が『ブギウギ』で演じるのは、「東京ブギウギ」などのヒット曲で知られる笠置シヅ子をモデルにした主人公の鈴子。銭湯の看板娘だった鈴子が、“ブギの女王”と呼ばれる戦後の大スター歌手となるまでの波乱万丈な物語が同作では描かれる。気になるのは、その歌声だ。映画『東京の日』では趣里演じるヒロインがスナックで「なごり雪」を熱唱するシーンがあり、少しハスキーがかった真っ直ぐで音程のとれた歌声を披露している。これまでの朝ドラにはないほどの歌と踊りが出てくるとのことで、趣里が得意とする非言語の表現力が大いに発揮されることだろう。その無限大のパワーでお茶の間を元気づけてくれることを期待する。

■放送情報
2023年度後期連続テレビ小説『ブギウギ』
NHK総合にて、2023年秋放送
主演:趣里
脚本:足立紳
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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