趣里が語る、女優の仕事と断念したバレエの夢 「後悔っていうのは絶対になくならないのかな」

趣里が語る、女優の仕事と断念したバレエの夢

 今を懸命に生きる不器用な男女を描いた映画『生きてるだけで、愛。』が11月9日から公開されている。劇作家で小説家の本谷有希子による同名小説を映画化した本作は、鬱が招く過眠症のせいで引きこもりの寧子と、出版社でゴシップ記事の執筆に明け暮れる津奈木の同棲するカップルに焦点を当てたラブストーリー。監督を務めたのは、本作で劇場長編映画デビューを果たす関根光才。生身の人間に宿る心のなまめかしさとざらつきを16mmのカメラで捉えた。

 今回リアルサウンド映画部では、主人公・寧子を演じた趣里にインタビュー。趣里が思う寧子という人物像や、けがでバレエを挫折した過去、そして目まぐるしい活躍を見せる現在まで幅広く語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「寧子の気持ちがすごく理解できた」 

ーー寧子の引きこもりの部分に激しい共感を覚えたのですが、趣里さんは学校とかすんなり行けるタイプでしたか?

趣里:全然、行けるタイプじゃなかったです。内気な子で、バレエを始めた頃も行きたくなくて、泣いて、引っ張り出されて行っていました。たぶん環境の変化が怖かったのだと思います。

ーー身内には口達者なのに、社会に出た途端小さくなってしまう寧子のリアルさも怖いくらいでした。

趣里:寧子が、心を許している人には、なんでも見せすぎてしまうところって、わたしの中にもすごく思い当たる節があります。中には違う人もいると思うんですけど、たぶん多くの人がそうなのかもしれないなと思います。「親しき仲にも礼儀ありだな」ってわかっていながらもどうしても思いを止められないときってありますよね。だから、それで怒られたこともあるし、「自分だけが大変じゃないんだぞ」と言われたこともありました。それで、またやってしまったって自己嫌悪に陥るんですけど、でも止められないことってあると思うんです。

ーー寧子は100%自己中なわけではなく、罪悪感を抱えているので愛おしいですよね。

趣里:朝起きて「またやってしまった」って後悔しているので、ダメな自分にも実はちゃんと気付いているんです。それでも、またやってしまうという繰り返し。演じてみて、寧子に凄く人間味を感じました。

ーー目覚まし時計で頭を叩くシーン、痛くなかったですか?

趣里;あれ発泡スチロールだったんですけど、思いっきりやっていたので、たんこぶはできました(笑)。

ーー自分への怒りを消化しきれずに暴れてしまうというのは、すごく共感できます。

趣里:結構、観て「え?」って思う人もいるんですけど、こういう人実際にいますよね。表に出るときはきれいにしているけれど、裏では違う。でも、そういうものは誰しも抱えているように思います。

ーー寧子は複雑な役柄だったと思いますが、どう役作りをしたのでしょうか?

趣里:わたしも彼女の気持ちがすごく理解できたんです。なぜ寧子がこういう行動を取るのかを考えました。自分も、相手とのちょっとしたすれ違いで「なんでわかってもらえないんだろう」って思ったり、逆に相手を理解できなかったりっていう部分はすごく思い当たりました。今回は調べるとかではなく、自分の経験とも重なる部分を思い出して役作りしました。とにかく寧子のことを考えると自分に返ってくるので、自分と向き合う。その繰り返しでしたね。

ーー自分の中の理性を削ぎ落としたら、全員が寧子になれる気がするんです。

趣里:その表現はまさにそうですね。だからちょっと羨ましくもあります。道を走って「ギャー」って言えたり、初対面の人に「つまんねえな」って言えたり思っていることをストレートに言葉にするってなかなかできないですよね。

ーー人を否定することも、エネルギーが必要ですもんね。

趣里:だから同じくらい、寧子は自分のことを否定しているんだと思うんですよね。そういうところが苦しいんだと思います。

ーーハンバーグと目玉焼きを作るシーンで、「頑張るぞ!」と意気込んだ日に限って壁が立ちはだかるのも印象的でした。

趣里:そういうとき、ありますよね。頭で組み立てていたものが全部、崩れちゃって、「じゃあこれ作れないじゃん」ってなってしまう。そういう自分に対面するのはすごく怖いですよね。

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