佐藤健と有村架純による“静かな激情” 異色の時代劇『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
約10年にわたって展開された大人気シリーズ、映画『るろうに剣心』の第5作目にして最終作である『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が日本テレビ系『金曜ロードショー』で地上波初放送される。おそらく、大きな驚きを、あるいは困惑を、そして悲しみと苦しみとを幸福な金曜日の夜のお茶の間に浸透させることになるのではないかと思う。未見の方は注意してほしい。本作はこれまでのにぎやかな4作とはまったく違うのだ。
本作が描くのは、物語の“すべてのはじまり”。つまり、主人公・緋村剣心(佐藤健)の過去である。“人斬り抜刀斎”として恐れられていた彼は、いったいどれほど血も涙もない男だったのか。第4作目『るろうに剣心 最終章 The Final』でようやく語られた剣心の十字傷の真相とはどのようなものなのか。それらのすべてが明かされることになる。
先に記した本作に対する“驚き”というのは、これまでの4作との違いの大きさに対してだ。時代は動乱の幕末。誰もが刀を手にし、その切っ先を敵対する者同士が向け合っている時代である。そんな世の中で、倒幕を目指す者たちの力となり暗躍しているのが剣心だ。彼は“刀を持つ幕府の人間”を斬って斬って斬りまくる。ほとんど言葉を発さず、表情も変えず、どんな大男でも一瞬で斬り捨てる。剣心が手にしているのは“逆刃刀”ではなく“真剣”だ。いくどとなく血しぶきが上がる。4作目までの主要キャラクターであった神谷薫(武井咲)や相楽左之助(青木崇高)の前で見せていたあの朗らかさは皆無。とにかく本作は一貫して暗いのである。
それに本作は、これまでのようなスペクタキュラーな展開が少ない。たとえば兵器を使った大爆発だとか、剣が火を吹いたりするなどということがない。生身の人間同士が刀を手に対峙するばかり。より“時代劇色”が強いのだ。本シリーズでアクション俳優としても認知されるようになった主演の佐藤健の身体能力の異常さは、この『The Beginning』でこそ真に堪能できるというもの。冒頭のシーンでは捕縛された状態からその場にいる10人以上の男たちを瞬殺していくのだが、その圧倒的な速さと陰惨さに誰もが“困惑”することになると思う。維新の志士である桂小五郎(高橋一生)や高杉晋作(安藤政信)の登場や、シリーズ全作に登場している斎藤一(江口洋介)がかつて在籍していた新選組の沖田総司(村上虹郎)らといった、歴史上の人物たちが何人も顔を見せていることも、本作が持つ“時代劇色”に強い影響を与えている。