『ハロウィン』完結編、北米No.1も厳しい初動 パク・チャヌク監督6年ぶりの新作も初登場

『ハロウィン』完結編、北米首位も厳しい初動

 秋はやっぱりホラーが強い? 10月14日〜10月16日の北米週末興行収入ランキングは、『ハロウィン』新3部作の完結編『Halloween Ends(原題)』が首位に輝いた。3901館で4125万ドルという初動は、さすが人気シリーズの貫禄。思わぬライバルとして登場していた『Smile(原題)』を2位に押しのけての初登場となった。

Halloween Ends - The Final Trailer

 殺人鬼マイケル・マイヤーズの恐怖を描く『ハロウィン』シリーズは、ジョン・カーペンター監督による『ハロウィン』(1978年)に始まり、この『Halloween Ends』で13作目。本作はデヴィッド・ゴードン・グリーン監督『ハロウィン』(2018年)からスタートした新3部作の完結編で、第1作から繋がる正統な続編シリーズのフィナーレとなる。ローリー・ストロード役のジェイミー・リー・カーティス、マイケル・マイヤーズ役のニック・キャッスル、そしてゴードン監督が再び続投した(日本公開は未定)。

 2022年の公開作品で、オープニング興行収入が4000万ドルを超えたのはまだ12本目。7月に公開されたジョーダン・ピール監督『NOPE/ノープ』以来の達成だから、今年の映画興行に目立ったヒット作が少ないこと、そんな状況下でもホラー映画が優れた初動を見せる傾向があることが見て取れる。

 ところが『Halloween Ends』の成績でさえ、必ずしも大成功とは言えないのが実情だ。本作は公開以前、3日間で5000~5500万ドルを稼ぎ出すと予測されていたため、残念ながらスタジオの期待には届かなかった。前作『ハロウィン KILLS』(2021年)は、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『DUNE/デューン 砂の惑星』『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』といった強豪ぞろいの中で初動成績4940万ドルを記録していた(それでも事前の予測よりは低かった)が、今回はライバルの少なさに対し、前作よりもさらに800万ドル少ない滑り出しとなった。

 シリーズ作品が動員数を増やし続けるのは決してたやすいことではないが、新3部作の完結編にして最低の初動成績となったことは、『ハロウィン』シリーズの求心力がわずか4年で衰えたことを示唆している。本作は評価面でもいささか厳しく、Rotten Tomatoesでは批評家スコア41%、観客スコア57%を記録。観客の出口調査に基づくCinemaScoreでも新3部作で最低の「C+」評価となった。幸いにも製作費は3300万ドルと抑え目なので黒字化も視野に入るほか、数日中には『ハロウィン KILLS』の初動である4940万ドルを上回る見込み。興行としては勢いを急落させることなく走りきりたいところだ。

 なお本作は、『ハロウィン KILLS』と同じく劇場公開と同時に米Peacockでの配信がスタート。製作・配給のユニバーサルによると、配信後2日間の視聴回数は同サービス史上最高の成績を記録したという。正確な数字は発表されていないため、ビジネス的なメリットの大きさは不明だが、こちらはひとまず喜ばしい記録である。

 第2位の『Smile』は公開3週目ながら前週比-33%という人気ぶりを見せつけ、3日間で1240万ドルを記録。すでに北米興収は7116万ドル、海外61市場では6640万ドルを稼ぎ、全世界累計興収は1億3756万ドルとなった。本作は海外でも優れた成績を示しているのが特徴で、この週末には前週比-16%の1630万ドルを記録。1週目の『Halloween Ends』が77市場で1720万ドルだから、比較すると本作の強さは明らかだろう。

 第3位にランクインした『Lyle, Lyle, Crocodile(原題)』は、邦題『シング・フォー・ミー、ライル』として2023年3月24日に日本公開が決定。北米では公開2週目で739万ドル、前週比-35.1%という堅実な推移を見せており、北米興収は2275万ドルとなった。ショーン・メンデスと名優ハビエル・バルデムのタッグ、そして『グレイテスト・ショーマン』(2017年)の音楽チームによる劇中曲のコラボレーションは日本でどう観られるか、今から公開が待ち遠しい一作だ。

THE WOMAN KING – Official Trailer

 同じく日本公開が待たれる『The Woman King(原題)』は第4位で、公開5週目で前週比-28.5%という粘り強さをキープ。北米興収は5974万ドルとなり、製作費5000万ドルのため黒字化の可能性も出てきた。その一方、第5位『アムステルダム』は2週目ということもあり-55.1%という下落率に。週末3日間で289万ドル、北米興収1195万ドルという成績は、作品に対するネガティブな評判と、いかなる形でも話題を作れなかったという本国の課題をそのまま表している。

 第8位、大手スタジオによる初めてのゲイ・ロマンティックコメディ『Bros(原題)』は、これまた興行的苦戦を余儀なくされ、公開3週目にして上映館を1000館以上減らす事態に。同作が2200館規模で92万ドルという苦汁をなめるかたわら、『トップガン マーヴェリック』は公開21週目ながら902館で68万ドルを稼ぎ、いまだ第10位の座を譲らないのだから、映画興行とはいかにも残酷なものである。

 そのほか今週は、1955年に発生した実際の暴行事件に基づく『Till(原題)』が第18位に初登場。白人女性に口笛を吹いたという因縁をつけられ、激しい暴行を受けて死亡した14歳の黒人少年エメット・ティルの母親、メイミー・ティルが正義のため戦った史実の映画化だ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア100%、観客スコア96%という驚異の支持率を獲得し、映画賞での活躍ぶりに期待がかかる。

 監督・脚本はこれが長編第3作となる気鋭チノナイ・チュクー。出演は『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野』(2021年)のダニエル・デッドワイラーをはじめ、製作を兼任したウーピー・ゴールドバーグ、『Swallow/スワロウ』(2019年)のヘイリー・ベネットら。まずは16館での公開となったが、次の週末には上映館が150館以上追加される予定だ。

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