映画化はテレビドラマにとってのゴール? 『Dr.コトー』『ネメシス』など劇場版が量産

映画化はテレビドラマにとってひとつのゴール

 今や完全に定着したといえるテレビドラマの映画化。2022年4月には『ラジエーションハウス』(フジテレビ系)の映画『劇場版 ラジエーションハウス』が公開。9月には福山雅治主演のミステリードラマ『ガリレオ』(フジテレビ系)の劇場版『沈黙のパレード』が公開され、10月には秘書たちが独自のネットワークを駆使して悪の権力者と戦う『七人の秘書』(テレビ朝日系)の映画『七人の秘書 THE MOVIE』が公開された。

 さらに、12月には『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)の16年ぶりの新作となる劇場版が公開予定だ。

 2023年1月にはリーガルドラマ『イチケイのカラス』の劇場版、3月には広瀬すず、櫻井翔が主演のミステリードラマ『ネメシス』(日本テレビ系)の劇場版となる『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』、鈴木亮平が主演を務めたTBS日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の劇場版(公開日未定)の公開が予定されており、もはやテレビドラマの映画化は、1つのジャンルとして完全に定着したと言える。

映画『イチケイのカラス』特報【1月13日公開】

 テレビドラマの映画化が多い理由は、ドラマを観ていた視聴者が観客になるという集客の目処が立つからだろう。また、観客が設定や世界観をすでに理解しているため、物語の前提となるキャラクターの紹介を、ショートカットできることも大きい。たとえば2時間の映画の場合、最初の30分から1時間は、どうしても世界観や主人公の説明に時間を費やすことになる。しかし、テレビドラマの映画化なら、テレビシリーズ(1クールのドラマなら10話弱)で積み上げてきた蓄積があるため、本題に入りやすい。もちろんこれには一長一短があり、テレビドラマを観ていない観客にとっては、敷居が高くなってしまう。

 良くも悪くもテレビドラマの映画化は、テレビシリーズをこれまで観てきた視聴者に向けて作られている。では、ドラマの視聴者は、何を求めて映画館へと向かうのだろうか。

映画ネメシス 黄金螺旋の謎』スペシャルコメント映像 2023年3月31日(金)公開

 映画化されるドラマの多くは、すでに一度最終回を迎えている。そのため、作り手は映画ならではのサプライズを用意しなければなけない。それは一本の映画としての完成度とは違う、テレビドラマが映画になることによってのみ、得ることができる独自のカタルシスだ。

 この違いを理解している作り手は少ない。近年、テレビドラマの映画化は急増しているが、ただ話のスケールを大きくしただけのスペシャルドラマと変わらないものがほとんどだ。それらの作品は興行的にも残念な結果に終わっており、逆に言うと、イベントとして演出できた作品だけが、ヒット作となっている。

 その最初で最大の成功例は、『踊る大捜査線』(フジテレビ系)だろう。カーチェイスや銃撃戦を禁じ手にして公務員としての刑事が板挟みになる官僚組織としての警察を描いた『踊る大捜査線』は、新しい時代の刑事ドラマとして評価された。

 平均視聴率こそ、当時としては決して高い数字ではなかったが、小ネタが散りばめたマニアックな作風が熱狂的なファンを生み、放送終了後に販売されたビデオソフトが売れ、再放送が話題となった。その影響でスペシャルドラマが作られ、その後、公開された劇場版第1作は大ヒット。そして、2002年に制作された劇場版第2作は興行収入173.5億を記録、日本実写映画歴代興行収入第1位となった。

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