milet、『知らないカノジョ』で“知られた彼女”に 映画初出演で示した“演技者”としての実力

milet、『知らない彼女』で知られた演技力

 演技経験のなかった者が初めて映画やドラマに出演し、デビュー作でありながら素晴らしいパフォーマンスを刻み込むことがある。中にはスカウトからキャリアを始める場合もあるが、その多くは何かしらの表現活動を経験している者たちだ。シンガーソングライターのmiletは『知らないカノジョ』で映画初出演にして演技に初挑戦し、ヒロインという最重要ポジションを見事に務め上げている。 ミュージシャンとしてだけでなく、今後は俳優としても活動していくことに期待せずにはいられないほどだ。

 『知らないカノジョ』は、数々のラブストーリーを手がけてきた三木孝浩監督の最新作。文学の世界で成功した男が、いつも隣にいたはずのパートナーと出会っていない、しかもふたりの立場が逆転した“もうひとつの世界”に放り出され、再び彼女を取り戻すために奮闘するさまを描いている作品だ。ざっくりとしたあらすじは次のようなものである。

 小説家を夢見る主人公・神林リク(中島健人)は大学時代、ひょんなことからミュージシャンを目指す前園ミナミ(milet)と出会う。やがて惹かれ合ったふたりは結婚し、幸福な関係を築いていくことに。しかしそれから8年後、リクはベストセラー作家になっているが、ミナミの夢はうまく実現していない。リクは自分のことで精一杯で、ミナミの優しさにも気がつけないでいた。

 ある朝、リクが目覚めると、隣にあったはずのミナミの姿がない。ミナミがミュージシャンとして大成功し、リクは小説家ではなく編集者として生きる世界に、彼は放り出されたのだ。しかもふたりは出会ってすらいない。こうしてリクは元いた世界に戻るため、奮闘していくことになるのだ。

 女性ミュージシャンがミュージシャン役として映画作品に出演して成功した例は、過去にいくつかある。平成初期生まれの私がリアルタイムで観てきたものとしては、2005年に中島美嘉が主演の『NANA』があり、2006年にはYUIが主演の『タイヨウのうた』があった。いずれもその年を代表する作品であり、中島もYUIも初の主演映画にしてその演技が評価されたものである(中島はそれ以前にも映画やドラマへの出演経験があったが)。

 2021年の東京オリンピックの閉会式で「愛の讃歌」を歌唱したmiletは、いまや国民的ミュージシャンだといえるだろう。彼女がメジャーデビューを果たした2019年からこの数年のうち、数々の映画やドラマのタイアップ曲を手がけ、各作品の成功に貢献してきた。そして中島やYUIがかつてそうであったように、映画作品でミュージシャン役を演じる機会に巡り合ったのだ。しかも、音楽の世界で優れた歌い手である彼女は、映画の世界で優れた演技者であることを証明している。

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