仲野太賀×草彅剛×伊藤沙莉の魂の芝居 『拾われた男』を120%楽しむための3つのポイント

『拾われた男』を楽しむ3つのポイント

演技の“ゾーン”に入っている仲野太賀×草彅剛×伊藤沙莉

 主演を務めた仲野太賀、諭の兄・武志を演じた草彅剛、諭の妻となる結を演じた伊藤沙莉。言うまでもなくこの3人の演技がとにかく素晴らしい。三者ともこのドラマへの出演で、演技の新たな「ゾーン」に入ったのではないか。そんなことさえ考えてしまうほどだ。

 仲野太賀はこの作品での役作りのために10キロ増量したというが、外見を抜きにしても、まるで松尾諭の生き様や役者魂を“念写”したかのような「存在のそっくりさ」が見事だ。それでいて、ただの「物まね」ではなく、しっかりと「松戸諭」という独自の魅力的なキャラクターに仕上げている。

 このドラマは前半と後半で、まるで別作品のような味わいを持つのだが、後半部の「陰の主役」とも言うべき兄・武志を演じた草彅剛の芝居に息を呑む。特に諭と武志が対峙するシーンは、「双方強豪のアスリート同士の試合で、共に世界記録を叩き出した瞬間」を目撃したような感覚をおぼえる。

 そして、いつでも俳優・松戸諭の「ケツを蹴って」励まし、支える妻・結役の伊藤沙莉。彼女がしなやかに表現する結の逞しさ、優しさ、安心感、いじらしさにノックアウトされた視聴者は少なくないだろう。「俳優・松戸諭のサクセス・ストーリー」「夢を抱く若者たちの群像劇」といった趣の前半では「恋愛ターン」の“ヒロイン”であった結が、やがてこのドラマの後半のテーマである「家族の物語」の立役者となっていく。その変遷も味わい深い。

 『拾われた男』は簡単にジャンル分けのできない、重層的で多面的な作品だ。そして、そんな能書きを抜きにしても、とにかく抜群に面白い。NHK BSでの本放送を見逃していたという方にも、地上波での再放送を機にぜひ観ていただきたい傑作だ。

■放送情報
NHKドラマ10『拾われた男』
NHK総合にて、10月11日(火)スタート 毎週火曜22:00~放送(連続10回)
※再放送は、翌週火曜15:10~
出演:仲野太賀、伊藤沙莉、鈴木杏、伊勢志摩、北村有起哉、要潤、安藤玉恵、前田旺志郎、北香那、松本穂香、岸井ゆきの、片山友希、大東駿介、塚本晋也、六角精児、夏帆、松尾諭、柄本明、ベンガル、綾田俊樹、末成映薫、井川遥、風間杜夫、石野真子、薬師丸ひろ子、草彅剛
原作:松尾諭著『拾われた男』(文藝春秋刊)
監督:井上剛
脚本:足立紳
音楽監督・音楽:岩崎太整
制作・著作:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社/株式会社NHKエンタープライズ
写真提供=NHK

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