『一橋桐子の犯罪日記』“ムショ活”は決して他人事ではない 切なく愛しい松坂慶子の魅力

『一橋桐子』が描く他人事ではないムショ活

 松坂慶子主演の新土曜ドラマ『一橋桐子の犯罪日記』(NHK総合)が10月8日より放送開始となった。第1話放送後、Twitterでは「未来の自分の姿かもしれない」「将来味わうであろう孤独を想像して泣いてしまった」といったツイートが相次いで投稿されている。そんなふうに多くの人からシンパシーを得る主人公・桐子(松坂慶子)の魅力とは――。

 老後は気の置けない友人と一つ屋根の下で楽しく余生を送る。そんな夢を思い描いたことがある人、もしくは実際に誰かと約束を交わしたことがある人も多いのではないだろうか。桐子は、親友の知子(由紀さおり)とその夢を叶えた一人だ。若い頃からのお見合いがことごとく失敗に終わり、76歳まで独り身を貫いた桐子と、娘を育て上げ、夫を看取った知子。句会で出会い、意気投合した二人は「一緒に住まない?」という知子の提案で同居することになった。

 互いの年金とパート収入でやりくりする生活は決して楽ではないけれど、ともに食卓を囲み、俳句を嗜んで、ときに恋の話で盛り上がる。そんな些細な幸せに満ち溢れた二人の同居生活は、知子が急な病で他界したことにより終幕を迎えた。菜の花のように明るく、温かい人柄で自分の人生を彩ってくれた親友の死。桐子はその哀しみにめいっぱい暮れたいのに暮れられない。これからどこで、どうやって孤独と向き合いながら生きていくのか。今後の身の振り方を迫られる桐子。そこには、置いていかれる者の切なさがある。

 そんな桐子に更なる悲劇が襲いかかる。知子の知人を装った“香典泥棒”になけなしのお金まで盗まれ、なんとか引っ越した家賃3万円のボロアパートは相次いで住人が死んだ事故物件。その事実をわざわざ伝えにくる変わり者の隣人(竹原芳子)もおまけ付き。密かに憧れていた句会メンバーの三笠(草刈正雄)はふた回りも下の女性・薫子(木村多江)と婚約してしまう。まさに満身創痍の桐子を奮い立たせたのは、テレビで見た万引き犯の「刑務所に入りたくてやった」という供述だった。

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