『ONE PIECE』の世界を揺さぶる問題作『FILM RED』 ウタの言う「新時代」の意味とは

ワンピースの問題作『FILM RED』

 アニメ映画『ONE PIECE FILM RED』(以下、『FILM RED』)の興行成績が好調だ。9月19日までの時点で149億円を突破。今年の作品ではトップとなっている。

 コミックスが現在103巻まで発売されている尾田栄一郎の漫画『ONE PIECE』(集英社)は言わずと知れた国民的大ヒット作品。物語はワノ国編を終えて、これから最終章だとアナウンスされており、掲載誌の『週刊少年ジャンプ』ではこれまで以上の盛り上がりをみせている。

 2009年の『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』以降、尾田栄一郎は劇場アニメに積極的に関わるようになっており、原作漫画との連携がより密接になっている。本誌連載では、主人公のルフィと序盤から登場する重要人物であるシャンクスとの再会が間近に迫っているのではないかという状態だったため、シャンクスが登場する『FILM RED』には、今までの劇場映画とは違う熱気が公開前から漂っていた。

 また、監督が谷口悟朗だというのもアニメ好きからすると大きな注目ポイントだった。『プラネテス』や『コードギアス』シリーズの監督として知られる谷口は、テレビアニメ化以前に『ジャンプ・スーパー・アニメツアー’98』で上映されたOVA「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」の監督を務めているものの、『ONE PIECE』の世界とは真逆の、尖った作風のアニメ監督という印象が強かった。

 『FILM RED』のパンフレットに収録されたインタビューで尾田栄一郎は谷口のことを「サブカル界のリーダー」と語っているが、谷口監督に任せることで『ONE PIECE』に新しい風をもたらしたいという意図が『FILM RED』にあったことは間違えないだろう。

 それは物語にも強く現れている。ウタという歌姫の少女を中心に添えた本作は、ウタのライブパートを担当するAdoの楽曲が次々と流れる中で大勢のキャラクターがダンスを踊るように必殺技を披露するミュージカル調の映画となっており、宝塚歌劇のようなレヴュー(大衆娯楽演劇)を観ているかのようである。

 何よりウタ自体がこれまでの『ONE PIECE』にはいなかったキャラクターだ。彼女を通して『ONE PIECE』の世界に揺さぶりをかける問題作として『FILM RED』が作られたことは、誰の目にも明らかだろう。

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