『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が描くのは『ゲーム・オブ・スローンズ』の再定義?

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は何を描く?

 この父娘と対になって描かれるのが、王の手オットー・ハイタワーとその娘アリセントだ。これまでのエピソードからオットーは洗脳とも言えるやり口で我が子を政争の道具として育ててきたことが伺える。まだ年端もいかないアリセントが父の命令に疑いを抱くはずもなく、しかし無意識の自傷から彼女の抱えるストレスは明らかだった。第3話でオットーは王妃となった我が子に王位継承権の簒奪を持ちかけ、アリセントもまた自身の得た権力に自覚的な節が垣間見える。シーズンは今後、エミリー・キャリーから演技派オリヴィア・クックへと配役が交代し、アリセントのキャラクターがさらに掘り下げられることになるだろう。

 1シーズン全10話で20年間を描く『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が駆け足的な年代史に終わらないためにも、グレッグ・ヤイタネス監督の丁寧すぎるくらいの語り口が丁度いいのかもしれないが、さすがに終盤の合戦シーンは砂に足を取られたようにキレが悪い。デイモンの敗北が必至と知るや、ヴィセーリスは踏み石諸島への援軍を決断する。この報せを受けると、デイモンはヴィセーリスの使者を滅多打ちにした。ドラゴンの如く激しい気性とプライドがそれを許さないのだ。デイモンは自らが囮となって単騎、敵陣に切り込むと、ついに“蟹餌作り”を討ち取る。返り血に染まるデイモンの勇姿は狩りの最中、獲物の返り血を浴びたレイニラの姿と重なる。誇り高き竜の血を持つ者たちを、何人も御することはできないのだ。そしてレイニラが“王の森の王”とも称される神秘的な白い牡鹿を目にしたことを、私たちだけが知るのである。

■配信情報
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』
U-NEXTにて配信中
出演:パディ・コンシダイン、マット・スミス、オリヴィア・クック、エマ・ダーシー、スティーヴ・トゥーサント、イヴ・ベスト、ファビアン・フランケル、ソノヤ・ミズノ、リス・エヴァンス、ミリー・オールコック、ベサニー・アントニア、フィービー・キャンベル、エミリー・キャリー、ハリー・コレット、ライアン・コア、トム・グリン=カーニー、ジェファーソン・ホール、デヴィッド・ホロヴィッチ、ウィル・ジョンソン、ジョン・マクミラン、グレアム・マクタヴィッシュ、ユアン・ミッチェル、テオ・ネイト、マシュー・ニーダム、ビル・パターソン、フィア・サバン、ギャビン・スポークス、サバンナ・ステイン
日本語吹替版キャスト:早見沙織(レイニラ・ターガリエン役)、津田健次郎(デイモン・ターガリエン役)、堀内賢雄(ヴィセーリス・ターガリエン役)、大塚芳忠(オットー・ハイタワー役)、坂本真綾(アリセント・ハイタワー役)、大塚明夫(コアリーズ・ヴェラリオン役)、田中敦子(レイニス・ヴェラリオン役)、諏訪部順一(クリストン・コール役)
共同企画・製作総指揮:ジョージ・R・R・マーティン
共同企画・共同ショーランナー・製作総指揮・脚本:ライアン・コンダル
共同ショーランナー・製作総指揮・監督:ミゲル・サポチニク
製作総指揮・脚本:サラ・ヘス
製作総指揮:ジョスリン・ディアス、ヴィンス・ジェラルディス、ロン・シュミット
監督:クレア・キルナー、ジータ・V・パテル
監督・共同製作総指揮:グレッグ・ヤイタネス
原作:ジョージ・R・R・マーティン『炎と血』
原題:House of the Dragon
翻訳:川又勝利、佐々井朝衣
©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
公式サイト:https://www.video.unext.jp/title_k/house_of_the_dragon

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