『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』出演者&製作陣にインタビュー 『GoT』からの“解放”も?

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』インタビュー

 「陰謀とセックスとドラゴン、たくさんのたくさんのドラゴン!」。「『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』を3つの単語で表すと?」という質問に、コアリーズとレイニスのヴェラリオン夫妻は声を揃えて言う。ピークTV時代の最重要作品『ゲーム・オブ・スローンズ』が全8シーズンで描いた世界のおよそ270年前、ドラゴン遣いのターガリアン家の闘争の歴史を描く新しいサーガにも、旗印のような3つのキーワードは健在なようだ。だが、『ゲーム・オブ・スローンズ』が作られた10年前と現在では、明らかな時代の変遷がある。その違いを意識することで、より革新的な物語が生まれるとショーランナーは力説する。

 『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、アメリカでの配信と同時刻、日本でも8月22日午前10時からU-NEXTで配信がスタート。新作のプレミアを前に、ロサンゼルスでキャストのスティーヴ・トゥーサント(コアリーズ・ヴェラリオン役)とイヴ・ベスト(レイニス・ヴェラリオン役)、そして製作総指揮・ショーランナーのライアン・コンダルとミゲル・サポチニクに直接取材する機会を得た。

スティーヴ・トゥーサント&イヴ・ベスト

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン

――それぞれ、役柄について教えてください。

スティーヴ・トゥーサント(以下、トゥーサント):コアリーズ・ヴェラリオンは、“海蛇”とも呼ばれる著名な海洋探検家です。彼はウェスタロスで最も裕福な男で、若い頃に行った航海で世界の果てにある地域にまで遠征し、貴重なスパイスなどを手に入れ財を築きました。こうしてヴェラリオン家を発展させたのです。(イヴ・ベストの方を向き)そして彼は隣にいるこの女性と出会い、恋に落ちました。

イヴ・ベスト(以下、ベスト):ターガリアン家に生まれたレイニスは、生まれながらの継承者で、政治的洞察力に優れ、経験豊富で気質的にも非常に優れたリーダーでしたが、出し抜かれてしまいます。今は「戴冠せざりし女王」として知られています。彼女はドラゴンライダーでもあります。

――どのように役作りをされたんですか?

ベスト:ドラマについては知っていたけれど、観たことはなかったんです。そしてライアン(・コンダル)とミゲル(・サポチニク)に会ったら、二人ともとてもクールで、脚本も最高にクールだと思いました。ところが、送られてきた脚本は人物名が全て書き換えられていて、「これは実際の脚本ではありません」との但し書きがありました。全体的にミステリアスな雰囲気が漂っていて、一体私は何に巻き込まれているのだろうと思いました(笑)。役作りと言っても、そもそも脚本どころか、このプロジェクトのすべてが謎に包まれていたから、何から始めていいのかわかりませんでした。あまりにも秘密主義で、脚本はほとんど読ませてもらえず、ただ、断片的な情報しか与えられなかったのです。脚本の代わりに、リハーサルが始まる5分前にiPadを渡されました。そのデータも暗号化されていて、自分がこのキャラクターを演じることを証明しないと、パスワードすらもらえないのです(笑)。

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン

――『ゲーム・オブ・スローンズ』は、視聴者が現実からの逃避として楽しむファンタジーの世界に現実社会との類似性を配置し、世界中のファンを虜にしました。今作ではいかがでしょうか?

ベスト:もちろん、『ゲーム・オブ・スローンズ』のようにスケールが大きく、素晴らしい特殊効果とファンタジーの要素があるからファンタジードラマが愛されているのです。でも、私たちのドラマの中心にあるのは、この狂気に満ちた一族の人間関係です。脚本家チームと初めて会った時に最も心を動かされたのは、「ドラマの冒頭であなたのキャラクターが言うセリフが核になります」と言われたこと。「男は領土を灰にしても、女に“鉄の王座”を譲るまい」――このセリフから“鉄”を取り除くと、現代の女性が直面している現実と重なります。今日の状況と無関係なはずの中世のファンタジーを、現在の状況と重ねて読み解くのはとても興味深い領域です。だって、笑ってなんていられないのだから。いまだに女性の大統領はいません。いくつかのエピソードの脚本を書いたサラ・ヘスに会った時、真っ先にヒラリー・クリントンの名を挙げ、レイニスとの共鳴について話し合いました。今までで最も適格な大統領候補が、たまたま女性だっただけなのに、というような話を。私たちの現実のほうが、コミックみたいに奇妙な世界なんです。

トゥーサント:イヴに100%同意します。そして、本当に優れた作品とは、史実を元にしていようが西部劇だろうが、それらが作られた時代を代表する作品のことだと思います。このドラマは、二人の若い女性を触媒として、私たちはまだ革新的な世界を目指し戦っている最中だと表しているように思います。私たちの国も、道化のような者が支配していた時代があり少し後退しましたが、それでも一般的には、ゆっくりと正しい方向に進んでいると思います。今日は昨日より良い1日、なのです。

ベスト:『ゲーム・オブ・スローンズ』のファーストエピソードの頃から比べても、世界は大きく変わりました。覚えていますか? エピソード1で描かれていたこと、女性の扱われ方を……。(自分たちを指して)このようなキャスティングだって、当時とは違います。今、私たちが作っているドラマに対して、とてもポジティブな思いを抱いています。

トゥーサント:意識の変化について言うと、ちょうど『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン3を観ていた頃だと思いますが、「すごいドラマだよ、観た方がいい!」とパートナーに勧めました。ドラマを一緒に観た彼女は、「でも……どうして女性はみんな裸なの?」と不思議そうに言いました。私は「ダメなの!?」と答えたあとに、言われてみればそうだ、と考え込んでしまいました。あまりにも見慣れてしまっていて、それが問題だという発想に行きつかなかったんです。とても反省しました。

イヴ:男性の裸についても同じことが言えますね。

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――『ゲーム・オブ・スローンズ』の遺産を守りつつ、前日譚を作る上でどんな新しい視点を入れようと考えていますか?

ベスト:安心したのは、これは続編ではないということ。登場人物はすべて完全なる新キャラクターで、『ゲーム・オブ・スローンズ』で描かれた世界の約300年前に存在しています。ここはまだウェスタロスで、物理的に同じ環境であることを除けば、『ゲーム・オブ・スローンズ』で誰かがやったことを踏襲する必要はありません。だから、ある意味とても自由なんです。

トゥーサント:ありがたかったのは、その重圧は俳優である僕らではなく、クリエイターの肩にかかっているんです。ジョージ(・R・R・マーティン)やライアンとミゲルは、完全に新しいシリーズを立ち上げなくてはならなかったから。明らかにウェスタロスで起きているような世界観で、でも全く違うものを。一族の物語だから、より親密さは表現されていると思います。

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