チョン・ウの頬を使った表情の演技に釘付け 韓国ドラマ『模範家族』が誘う“危険な世界”

『模範家族』潔白に見える人物ほど恐ろしい?

 Netflixで配信されるや否や、ドラマランキングにランクインした韓国ドラマ『模範家族』。チョン・ウ演じるパク・ドンハと彼の家族を描いた物語であるが、決して温かい家族を描いたヒューマンドラマではない。自分が使ってしまったお金を取り戻すために、未知なる世界に足を踏み込んでしまうのだ。

 主人公のドンハ(チョン・ウ)は、大学で教授を目指す非常勤講師。教授になるために賄賂としてお金を渡したが失敗して出世できず、心臓病を抱える息子のためにもなんとか失ったお金を工面しようとしていた。

 ドンハの様子を見兼ねた妻のウンジュ(ユン・ジンソ)は、ドンハに離婚を切り出し、家族は喧嘩ばかり。そんな時、ドンハの目の前に死体と共に大金が現れる。思わず手を出してしまうが、それは一歩も戻れない危険な世界への入り口だった……。

 ドンハを演じたチョン・ウは、『応答せよ1994』などでも有名な俳優だ。もちろん、今までも定評のあった彼の演技だが、本作で気になるのは頬を使った表情の演技。Netflix Koreaも、彼の顔の演技集を作ってTwitterに載せるほど、視聴者を釘付けにさせている。自分の憎い父親が家に来た時は唇を震わせ、怒った。恐ろしい状況に置かれた時も、恐怖で顔を振るわせる。感情が全て目に見えてわかるキャラクターだ。

 純粋そうな見た目、前科なしの大学教員という潔白な経歴の「模範市民」だからこそ、麻薬組織に利用されるようになってしまったドンハ。運び屋として直面するいくつもの恐ろしさに顔を震わせ、あるときは父親として笑顔でキャッチボールをする姿にはなんともサイコパスっぽさを感じざるを得ない。視聴者にも、善人だけどお金のために仕方なく悪いことをしてしまった教授に見せかけているようでならない。

 本作を観ると、「模範家族」のように見える世の中の普通の家族すら疑いたくなってしまう。ウンジュも、ドンハの異変に気付いては、家族のために一緒になってお金のために動く。

 ドンハの父であるドクス(オ・グァンノク)は、詐欺師であり、家族を蔑ろにしてきた人物。そして、ドンハを探る警察の言いなりになり、ドンハの家族に近づく。しかしながら、自分の息子が犯した罪を庇い、警察には全てを告げず、残した証拠すら消していた。皮肉にも、この事件を機に彼ら親子の絆は少し修復していく。娘のヨヌ(シン・ウンス)も反抗期で不良と遊び、父親の悪行を知ってしまう。それでも、何事もなかったかのように普通の日常生活に戻ることができている。この家族、どこかおかしいのだ。

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