『競争の番人』一人前の審査官への道を歩み出した杏 終盤戦へ向けた畳み掛けの始まり

『競争の番人』一人前の審査官になった杏

 毎回オープニングに登場する公取のPRビデオ風映像の「公正で自由な競争を目指して」が省かれた、8月22日放送の『競争の番人』(フジテレビ系)第7話。小勝負(坂口健太郎)とバディを組んできた楓(杏)が単独で案件に取り組むというあらすじからも見て取れるように、今回のエピソードの主眼は“公取”を描くことではなく、白熊楓という審査官の完成を描くことにある。それはつまり、より強大なものへと挑む終盤戦に向けたものであろう。

 小勝負をはじめ“ダイロク”メンバーたちが他の案件で出払ってしまい、風見(大倉孝二)から一人で調査案件を担当するよう言われた楓。その案件とは、大手通販サイト「三ツ星マーケット」の自社ブランド「アンカレント」の再販売価格維持について。他の通販サイトが、同ブランドの商品を値下げして販売したところ「三ツ星マーケット」から値下げをしないよう圧をかけられたというのだ。楓たちが立入検査を行うと、同社の社長の山辺(姜暢雄)もブランド事業部長の黒崎(雛形あきこ)も協力的。しかしその裏には、別の不正が隠されているのである。

 「表面的なものにとらわれちゃダメです。実は選んでいるようで、選ばされていたりするんです」と、今回は出番が少なかった小勝負は、ここぞというポイントで相変わらず的確な助言を入れてくる。楓が「三ツ星マーケット」の立入検査を打ち切ったことを聞きつけて指摘する、調査対象者への“肩入れ”。これまでのエピソードで何度も楓が直面してきた調査の上での課題が今回もまた物語を動かすひとつのフックとなる。結果的にそこから、情報提供も得て、サイトの人気ランキングが操作されているという不正に辿り着くわけだ。

 一人で“ブツ読み”を行ない、一人で聴取を行ない、そして“落とす”。これまでダイロクでやってきた経験や、小勝負や桃園(小池栄子)の仕事ぶりを見て学んだ部分を自分のものとして応用していく楓。また一方で黒崎を尾行し、彼女が自分が好きなようにデザインできていた頃の「アンカレント」の商品を購入していることを突き止めるなど、そこには刑事時代の名残も見え隠れする。さらには確たる証拠がないまま黒崎を“落とす”上で感情的な部分を刺激させる。その様はさながら古風な刑事ドラマのようにも見え、公取と警察の違いをひとつの軸に据えたこのドラマらしいアプローチだ。

 こうして楓が一人前の審査官への道を歩み出したところで、ドラマ終盤戦へ向けた畳み掛けが始まる。緑川(大西礼芳)が倉庫で見つけた「ラクター建設」を被告とした平成20年の事件の捜査資料。そこに記されていたのは小勝負の父の名前と、本庄(寺島しのぶ)の名前。そして中盤で突然インサートされた小勝負の過去の記憶。踏み躙られた紙に書かれた「日本一のビルを建てる」という言葉は、今回の案件のなかで「三ツ星マーケット」の山辺と黒崎が目指していた「日本一のブランドにする」という意気込みとリンクしている。

■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶ、姜暢雄、雛形あきこほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/
公式Twitter:@kyoso_fujitv
公式Instagram:@kyoso_fujitv

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