『ちむどんどん』竜星涼の土下座を見るのも最後? 賢秀の“今度こそ”の改心を願う

『ちむどんどん』房子が出した最後の宿題

 『ちむどんどん』(NHK総合)第94話が8月18日に放送された。賢秀(竜星涼)がねずみ講にはまったことで、開店資金の200万円を失ってしまった暢子(黒島結菜)。「ニーニーが無事だったからいいんです。お店はまたいつか」と口にするが、その表情は暗かった。

 その頃、賢秀は少年時代の記憶を思い返していた。共同売店で万引きをした賢秀(浅川大治)に代わって、賢三(大森南朋)が善一(山路和弘)に頭を下げる。賢三は「悪いことはしたけど、お前は悪い人間じゃない」と賢秀を責めなかった。賢三の言葉を思い出し、和彦(宮沢氷魚)と智(前田公輝)に土下座する賢秀。「俺は本当に情けない大バカ者やさ。暢子に幸せになってほしかった。母ちゃんに楽させてやりたかった」と心情を吐露する。「今後こそ心を入れ替えて地道に働く」と誓うその目には、大粒の涙が光っていた。

 賢秀の「今度こそ」はもう何度目だろうか。その度にがっかりさせられた一人として、今度こそしっかりしてくれと思わざるを得ない。賢三が賢秀を責めなかったのは、親として責任を感じていたこともあるが、何があっても我が子を信じる態度を示したと解釈できる。感化されやすい賢秀を突き放せば、ますます悪い方向に行ってしまうだろう。賢三にとって誤算だったのは、自分が早い段階で死んでしまったことだ。生活することで手いっぱいの比嘉家で、子どもたちは良く言えば自由に、悪く言うと野放図に育ち、そのことが後々まで尾を引くことになった。

 暢子の開店資金は、良子(川口春奈)・博夫(山田裕貴)夫婦が海外旅行のために貯めたお金を出してくれることになった。「あのニーニーがいたから、俺たちは結婚できたんだから」と感謝する博夫。度を越えた人の良さである。思い返すと博夫は旧習にこだわる石川家に長年縛られ、一方で良子とも別居婚という形で夫婦を続けてきた。単に優柔不断な性格と思っていたが、実は自己犠牲の精神にあふれた人格者なのかもしれない。良子は「うちが暢子の立場でも迷わずお金を渡した」と話す。父を早くに失って生き抜いてきた家族には、外部からはわからない強い絆があるのだろう。

 深すぎる家族愛の一方で、常識人が登場するのが『ちむどんどん』だ。「アッラ・フォンターナ」を去る日に、暢子は房子(原田美枝子)とグラスを傾ける。房子は、「どんなに苦しくても資金援助はしない。借金の保証人にもならない。たとえ親戚だといっても、そのルールは変わりません」と言う。辛酸を味わいながら店を大きくしてきた房子は、情に流されるのが相手のためにならないと知っていて、一連の騒動の後だけに暢子に常識を教える大人がいることに安堵した。

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