コリン・トレボロウ監督が『ジュラシック・ワールド』シリーズを完結させた今、思うこと

コリン・トレボロウが語る『JW』シリーズ

 本当に、完結してしまうのだろうか。7月29日公開の『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、これまでの『ジュラシック・ワールド』シリーズにおける最終作としてだけでなく、『ジュラシック・パーク』から始まった物語において、一つの完結を意味する作品となっている。監督を務めたのは、2015年公開の『ジュラシック・ワールド』からシリーズに携わってきたコリン・トレボロウ。全作の脚本を共同執筆している点で、彼がこの新たなシリーズの物語を生み出してきた張本人と言っても、過言ではない。そんな彼に、本作が持つ意味と、完結作を制作したうえでの心境について話を聞いた。

監督としての復帰、“レガシー”メンバーとの撮影を振り返って

――前作の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』ではJ・A・バヨナがあなたの代わりにメガホンを取りましたが、再び本作で監督に復帰した心境は?

コリン・トレボロウ(以下、トレボロウ):素晴らしい体験でした。実際、あまり自分が離れた感覚はなかったんです。ジェイ(J・A・バヨナ)と私はかなり密接になって一緒に2作目を作ったので。それは本作の物語が前作から密接に関係していることにも表れていると思います。常にコミュニケーションを取ることで、彼が伝えていた物語をしっかり僕の伝える物語の中に落とし込むことに気を配っていました。なので、『ジュラシック・ワールド』から始まったこの3部作を続けて観たとき、それが一つの長い物語として成立していると観客に思ってもらえることを強く願っています。

――本作ではサム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムと、『ジュラシック・パーク』に登場していた、まさにシリーズの核とも言えるキャラクターが再登場します。ファンにとってこれほどまでに嬉しいサプライズはないと思いますが、レジェンドの3人と一緒に仕事をした感想は?

トレボロウ:あらゆる面で今回、私は自分の仕事をするために、どれだけ自分が『ジュラシック・パーク』シリーズのファンであるかという気持ちを抑えなければいけませんでした。責任あるフィルムメイカーでいるために、そして彼らのようなアイコンにただへつらうだけの物語にしないために。僕も彼らの勇姿を見て育っていますからね。なので、その点を私は早くに乗り越えなければいけませんでした。もちろん、私はこれまでの仕事において敬意を忘れることは一度だってなかった。しかし、それと同時に今回は自分の心の中で握っていたそのグリップを少し緩めて、自分を含めた全員を信じて前に進み、新たなストーリーを語らなければいけないと感じました。彼らがこれまでの時間、どこに行っていたのか、どこで進化し、変わっていったかについて深く考えたんです。なので、ご覧になる本作はその哲学の産物だと、私は本当に思っています。

――興味深い意見ですね。今回、具体的にどのようにして“レガシーキャラ”の物語を描こうとしたのでしょう?

トレボロウ:まずはエリー・サトラー(ローラ・ダーン)の物語から着手しました。ご存じのとおり、アラン・グラント(サム・ニール)とイアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)は二人とも『ジュラシック・パーク』の続編で、彼らのキャラクターにフォーカスが当たる物語がありましたが、彼女にはなかった。そこで我々はこれを、クレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)の物語が『ジュラシック・ワールド』全作品の精神になったことに近い「機会」として捉えました。サトラーは本作で物語を動かすエンジンとなり、古植物学者だけが気づくであろう遺伝子的な力が関わるグローバルな不祥事を暴くために奮闘する。そして我々は恐竜時代から今日にかけて生き続ける生物の存在に気づいた。虫、イナゴです。そういったところから最終的に全てが組み合わさっていき、私たちは(物語の)残りの部分を構築できると感じました。

――なるほど、イナゴのシーンはとにかくインパクトが強いだけでなく、本作の大部分に登場するので恐ろしかったのですが、確かに恐竜時代から生き残っている生物としての登場、という点には納得できます。

トレボロウ:実は本作のプロローグとして事前に公開した映像にも仕掛けをしていて。映像は白亜紀が舞台なのですが、実は最初のショットで映されているのが、恐竜の足に止まるイナゴなんですよ(笑)。

映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』プロローグ映像

――うわあ! 思い返せばそうでした。サトラーを演じたダーンを含む『ジュラシック・パーク』の3人組と、クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワードの『ジュラシック・ワールド』組のケミストリーはいかがでしたか?

トレボロウ:映画の中にも表れていると思いますが、私たちはこの映画を作る過程で一緒に住んでいたので、みんなが非常に親密になりました。監督と俳優同士が普段知り合わないような方法でお互いを知ることができたんです。普通、監督は一緒に働いている人々がどんな人かあまり知ることができません。そのため、全てがすごくパーソナルなものになったのです。そのケミストリーが現実世界で起きているなら、映画の中でも起きる。キャラクターたちは映画に出ている感覚がないため、過去作のアイコンたちと接触しても普通なんです。ただ、その場を一緒に進んでいき、共に生き残る必要があるだけの存在として接する。その自然さこそ、我々が試みて、この映画で達成したかったことです。

本作で登場する新種の恐竜たち

――本作でシリーズの最も人気な恐竜であるラプトルのブルーとティラノサウルスのレクシィをあまり深く描かなかった点を大胆に感じました。新種の恐竜を紹介し、彼らを見せていくことに力を入れているように感じたのですが、その理由や意図は何でしょう?

トレボロウ:まず、あらゆる面で私はこのトリロジーを一つの長い物語と捉えています。そしてこの3作品が、長くにわたって今後も子どもたちに観られ続けるものだと思っていて、だからこそ私はいつもこれまで登場した恐竜についても、新たな恐竜についても新しいことが知れるアークを生み出そうとしてきました。この映画には羽毛恐竜が登場しますが、1作目の『ジュラシック・パーク』でグラント博士はラプトルが鳥に近い、という話もしていました。なので、時間をかけて観客が少しでもそういった微妙な繋がりがいくつあるかを理解していただけると嬉しいです。

――ピロラプトルのことですね。私もピロラプトルの姿を『ジュラシック』シリーズで拝めることができると思っていなかったので本当に嬉しかったです! デザインも素敵でした。

トレボロウ:それを聞けてとても嬉しいです、ありがとう。

――ピロラプトルも今回新種として登場しますが、監督ご自身にとってお気に入りの新種恐竜はいますか?

トレボロウ:全恐竜が大好きですが、本作でも活躍する大きくて長い爪が特徴的なテリジノサウルスが私のお気に入りかもしれません。彼女とブライス・ダラス・ハワードのシーンは私の監督キャリアにおいても特にお気に入りです。そしてテリジノサウルスが映画の後半以降で再び登場するシーンも、個人的にとても怖くてクールだと思っています。

――確かに、私もテリジノサウルスが水面までクレアを追うシーンはかなり緊張感があって、大好きです。怖い、といえば、前作の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はシリーズの中でもホラーテイストが強い作品でしたが、本作『新たなる支配者』は再びアドベンチャームービーとして雰囲気を取り戻したように感じました。その変更に何か意図はあったのでしょうか?

トレボロウ:ええ、やはり3部作全体を捉えたうえでの進化でした。最初の映画は、壮大で冒険的で、テーマパークの乗り物のような作品です。そして2作目は、より暗い部分に向かっていった。ご存じの通り、『炎の王国』では映画のちょうどミッドパートで火山が噴火し、私たちの知る島が崩壊します。なので、本作ではそれら全てのストーリーをもう少しロマンチックで希望に満ちた楽しいものに繋げると同時に、3部作の過程で私たちが尋ねた、いくつかのより深刻な質問に対処し、うまく答えることができれば良いと思っています。私たちはただ、恐竜のためにスクリーンに恐竜を登場させるようなことではなく、我々の語る物語に興味がありました。

――映画を通して尋ねられる問いに関しては、前作で恐竜にまつわる「アニマルライツ」の問題が、本作では恐竜との「共存」が挙げられると思います。監督ご自身は、本作で描かれたような人間と恐竜の共存の可能性について、どう考えますか?

トレボロウ:私たちが今生きている世界は“反響”であると、あらゆる物事をみて思うことがあります。過去30年~50年を振り返ってみると、そこには多くの選択がありました。それは我々の過ちであり、世界中の全ての人に悲惨な結果をもたらした。そのためこの映画では、「恐竜の再生」という“人間の過ち”とその結果を映すことで、我々がどのように前進していくべきか、という問いを投げています。私たちは時間を遡ることも、結果を変えることもできません。共に取り組み、共存する方法を見つけて前進しなければならないと考えています。

――共存といえば、本作にはかなりクレイジーなショットがたくさん登場しますね。アロサウルスとカルノタウルスが街に出て、マルタ島の広場で大暴れをしているシーンもありますが、監督的に特に気に入り、感心したショットはありますか?

トレボロウ:私にとって最もクレイジーなショットは、まさにお話ししていただいたシークエンスです(笑)。クリス・プラットがバイクで広場に抜けると、そこにはすでに大型恐竜が暴れていて、電動スクーターに乗っていた男を食べる。人々は逃げ惑い、カフェのテーブルや椅子が壊されていく。非常にエネルギッシュなあの一連のシーンで、私たちは達成したいことを達成できたと思っています。それは、カメラが一度に起きていることを全て映そうとするけど、恐竜たちの動きが早すぎてできない! というふうに描くことでした。その点があのシーンにおいて個人的にとてもクールだと感じています。

――迫力がすごかったですね。私もあのシーンは大好きでした。あのアロサウルスとカルノタウルスはやはりCGIなのでしょうか?

トレボロウ:あのショットにおいては、彼らはCGIです。彼らの動きを考えると、そうせざるを得ませんでした。しかし、彼らに食べられる男は本物です。なので実際、食べられている瞬間に彼はすごく高く宙に掲げられて撮影しています。我々はどこかで必ずリアルなことをしたいと考えている。観客の目はあのシーンで彼に注目しますよね、そして彼の持ち上がり方が実際の体重を感じさせられるくらい現実味を帯びているから、あのシーン全てがリアルに感じられるような仕掛けをしているんです。

――面白いですね。実際、アニマトロニクスも本作で多用したと伺いましたが、その上で挑戦的だったことは何でしょう?

トレボロウ:しっかりと、彼ら全てに重みと現実感を持たせたことですかね。アニマトロニクスの撮影においては何でもコミットする必要があり、やり直しがあまり効かないものだと知っていました。加えて、私たちは撮影した恐竜たちを上からデジタルで塗りつぶさずに、アニマトロニクスの生のまま撮ることを誓ったんです。なので、映画のいくつかの場面では観客が「これはアニマトロニクス(機械)だ」とわかるシーンもあるし、私はそれで良いと思っている。その不完全さが好きなんです。

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