百田夏菜子×落合モトキ『僕の大好きな妻!』は発達障害の理解への足掛かりとなるか

発達障害を知る『僕の大好きな妻!』

 ドラマや映画には1人の人生を“変える”力があるーー。

 「作品に出会って将来の職業を決めた」「出演俳優のファンになった」「原作の小説家を好きになって過去作も集めるようになった」……作品を観たあと、大なり小なり、何かしらの影響を受けて、“新しいものに触れたことがある”という人も少なくないはず。ドラマ・映画は、感動や希望を与えるだけでなく、新しい出会いをも提供し、人を動かすものでもあると思う。

 ももいろクローバーZの百田夏菜子が主演を務めるドラマ『僕の大好きな妻!』(東海テレビ・フジテレビ系)もそんな影響力を持つ作品の1つである。本ドラマでは、先天的な脳機能の障害だとされている「発達障害」にスポットを当てている。

 実体験を交えたナナトエリ・亀山聡の漫画『僕の妻は発達障害』(新潮社)をドラマ化した本作。ある日、主人公の北山知花(百田夏菜子)は、医師の宮野森楓(中田喜子)から発達障害の診断を受ける。動揺したのは、夫で漫画家アシスタントの悟(落合モトキ)。いつにもまして知花を支えようとするが、彼女は“変わろう”とする彼を拒否する。その後、反省した悟は、“知らないから怖いのだ”と、知花の特性を“知ること”に決め、一緒にできることを探していくーー。

 本作の魅力は、なんと言っても、夫婦2人の空気感。「ナイスキャスティング」とお礼を言いたくなるほど、百田と落合のやりとりが心地いいのだ。明るくエネルギッシュな知花と、その背中に寄り添う悟を通して、“発達障害のことを知ってもらいたい”という強い意志を感じる。

 近年、特に耳にするようになった発達障害だが、正直なところ、どんな特性があるのか知らなかったという人もいるだろう。過去をさかのぼると、当時、認識の甘かった「障害・病気」をテーマにし、理解を深めるきっかけになった作品がある。うつ病になった夫とその妻の生活を描いた細川貂々のコミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』(幻冬舎)だ。2009年にNHKでドラマ化、2011年には映画化されると、一気にうつ病に対しての認知度が向上。当時はいまほど「うつ病」が周知されておらず、「甘え」と切り捨てる人も多かった中で、大きな一歩を歩んだ。本作も『ツレうつ』同様、少しずつ発達障害を理解しようとする輪が広がっている状態だ。

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