『元彼の遺言状』綾瀬はるか×大泉洋の名バディも見納め 惜しむらくは関水渚の生かし方か

『元彼の遺言状』名バディも見納め

 十ヶ浜強盗殺人事件の裁判が終わり、晴れて自由の身となった篠田(大泉洋)は、出版社に自作のミステリ小説の持ち込みをしてみるもあえなく撃沈。しかし偶然出会った別の出版社の男に気に入られ、念願の作家デビューを果たすことになる。

 6月20日放送の『元彼の遺言状』(フジテレビ系)第11話は、「麗子失踪編」と題した事実上のエピローグだ。麗子(綾瀬はるか)と篠田のバディによる“最後の事件”とするには少々控えめなものであるが、事件の大小よりも登場人物のキャラクター性に重きを置く本作のスタイルを考えれば、このようなエピソードの形でもさして浮いた印象はない。

 ついに篠田のデビュー小説の献本が届き、その喜びを麗子に報告しようとしたのも束の間、麗子は突然タヒチに旅行に行くと言い残して電話が繋がらなくなってしまう。そんななか、娘の彼氏が失踪したと駆け込んでくる津々井(浅野和之)に、大量にもらった誕生日ケーキを抱えてやってくる黒丑(望月歩)。そして紗英(関水渚)も、とある政治家の事務所から3億円の裏金が消えた事件を持ち込んでくる。そこへまるで金の匂いを嗅ぎつけたかのように、麗子から普段使われていないアドレスと見慣れない文面のメールが届き、篠田は本当に麗子がタヒチにいるのか疑念を抱くのである。

 前回のエピソードのラストで示されたアーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズの冒険』は、麗子と篠田のバディの始まりを示すものだと解釈したが、同時に通常通り今回のエピソードへも結びつくものであった。津々井の持ち込んだ事件は「花婿失踪事件」であり、黒丑がもらったケーキに太客が300万円のダイヤを忍ばせたというくだりは「青いガーネット」を想起させ、3億円が消えた政治家の事務所で働く秘書たちが作った“健康促進クラブ”は「赤毛組合」に通じると。いずれも『シャーロック・ホームズの冒険』に収録された短編エピソードだ。

 もっとも複数の事件が頻発しながらも、それらがごくわずかな連動性しか有していないところは、このドラマが最後まで拭いきれなかったミステリードラマとしての脚本の弱さではないだろうか。篠田に持ちかけられた出版の話が詐欺であり、それが“夢の後押し”として津々井の事件と共通性がにおわされ、その詐欺の犯人の一人が黒丑の太客であり、麗子はその犯人を懲らしめようとして逆に暴行の嫌疑をかけられ留置されていると。限りなく麗子と篠田のバディとしての絆の深さを立証するようなねらいが見えつつも、前回のラストが綺麗な終わり方だっただけに、“おまけエピソード”としても少々歯切れの悪さが残る。

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