『ちむどんどん』に感じる作り手たちの挑戦 “喜怒哀楽”の混じり合った物語がスタート

『ちむどんどん』に感じる作り手たちの挑戦

 『ちむどんどん』でおもしろいのは、タイトルバックがアニメーションであることだ。これほど美しい自然を撮影技術が進化したいま、実写で見せたほうがいいのではないかという疑問に、制作側は「沖縄の自然は実写で切り取っても、肉眼で見たものには敵わない気持ちもあって」という意図からアニメーションで沖縄の自然を再現したと明かしている(※)。

 これまで『君の名は。』や『天気の子』などのアニメーション映画が実際の風景をリアルにアニメ化してきた。すると、その場所の魅力がリアリティーの再現を超えて増幅する作用が起こり、多くの観客を魅了し、聖地化した。今回のタイトルバックのアニメ化はこの現象を意識したものではないだろうか。例えるなら、歌舞伎俳優や宝塚の俳優が、自分の性と異なる性の役を演じるとき(女形、男役)、実際の男性や女性よりもその魅力が強調され、一層素敵に見えるようなことにも近いだろう。

 逆に、アニメと4Kで撮った実写を見比べると(ちょうど第3話に、アニメと似た感じの森の入り口の風景が出てきた)、実物の植物の陰影が印象に残り、この眼でそのものを見てみたいという気持ちが強くなった。

 自然の風景をアニメーションというレイヤーを通して描くことで、真実の風景を浮き上がらせる。これは作り手の大いなる挑戦ではないだろうか。

参照

※ https://realsound.jp/movie/2022/03/post-990649_2.html

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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