『二十五、二十一』のヒロイン・ヒドに惹かれる理由 ユリムとの関係性にも変化が

『二十五、二十一』ヒロインの魅力とは

 息をつく暇もない。一瞬にして過ぎ去っていく青春のように、Netflix配信中の韓国ドラマ『二十五、二十一』の約1時間もあっという間だ。だからなのか、一つひとつの瞬間がすぐに恋しくなり、何度も見返してしまった第3話と第4話だった。

 このドラマは、いつも誰かが全力で走っている。夢を追いかけるナ・ヒド(キム・テリ)はもちろんのこと、ヒドの憧れの存在であるコ・ユリム(ボナ)もその一人だ。人気漫画『フルハウス』の発売日というだけで猛ダッシュする姿は、フェンシングの韓国代表選手と言えどもやはり高校生である。“全力疾走”は青春のシンボルなのかもしれない。

 大人になると最後に全力で走ったのはいつだったか思い出せなくなる。けれど、ペク・イジン(ナム・ジュヒョク)は思いっきり走っていた。その理由は、自分のせいで無茶をしたヒドのため。イジンにとっては誰かのために、ヒドやユリムは胸が高まるから全力で走り出すのだ。早まる鼓動も爽快感も全力でないと味わえない。

 韓国代表の選考試合に出られることになったヒドは、ヤン・チャンミコーチ(キム・ヘウン)に特訓を申し出る。ランキング26位のヒドが目指すのは“1位”を取ること。ヤンコーチは“夢の見方”を知るヒドに喜びを感じていた。夢の見方がわかれば、戦い方を教えてあげられる。けれど、夢の見方もわからず戦い方だけを教わった者は、失敗を知らず挑戦するチャンスを逃してしまう。ヒドは前者で戦い方は知らないけれど、失敗を恐れず夢を追いかける熱意は人一倍ある。いつの時代も人の心を動かすのは間違えなくヒドだろう。ヤンコーチの言葉はふと確信をつくから、聞き逃せない。同時に、夢の見方を教えず、夢に向かうことも諦めさせてしまう社会や時代にも原因がある事実を思い知らされる。

 ヒドが誰よりも持っているのは、“負けた経験”と“諦めない精神力”だ。選考試合に出場できるのは、確かに時代が味方してくれたからだろう。しかしそれ以前に、諦めなかった自分自身が導いた結果である。第1話の冒頭で41歳のヒドが娘のミンチェに「1位になることは重要じゃない」と言ったのは、数えきれないほどの負けを経験した18歳のヒドからのメッセージだったのかもしれない。

 ヒドは負けてばかりの日々でも、“悲劇”を“喜劇”に変えて乗り越えてきた。ヒドが隣にいてくれたおかげで、イジンに起こる悲劇がすぐさま喜劇に変わる。蛇口をひねって吹き出す水や突然の雨を幸せに変え、周りの人を救えるヒドの強さは最大の魅力だ。

 本作では、所々で使われる引きの画からヒドとイジンの距離感が掴める。例えば、わざわざ苦労を選んだ二人三脚で肩を組んで家に帰るシーンや面接に落ちたイジンと玄関の前に並んで座るシーン、フェンシングで勝負するシーンだ。台詞だけではない細やかな演出から心の距離を感じられるのは感慨深く、脳裏に焼きつく。そして、2人の距離が近づくのは決まって夜のシーンが多いが、そこに流れる虫の音のBGMは心地が良い。夏の夜はどこか特別だけど刹那的でもある。

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