キム・テリとナム・ジュヒョクが好演の『二十五、二十一』 コロナ禍に刺さる悩みと言葉

『二十五、二十一』コロナ禍に響く悩みと言葉

 何も持っていないと思っていたあの頃は、すべてを持っていたのかもしれない。漫画1冊すら弁償できないほどお金がなくても、誰かを楽しませることも幸せにすることもできた。自分中心で回っていた小さな世界が、あんなにも無敵で輝いていたなんて。そんなことにふと気づかされる韓国ドラマ『二十五、二十一』が、いよいよNetflixで配信スタートした。

 1998年。IMF危機により、大好きなフェンシングができない状況に追い込まれた高校2年生のナ・ヒド(キム・テリ)と父親の会社が倒産して家族がバラバラになり、大学にも復帰できず生計を立てなければならなくなった22歳のペク・イジン(ナム・ジュヒョク)。同じ体験をしたわけではないのに既視感があるのは、今私たちがコロナ時代にいるからだろう。二度とやってこない青春時代を送る学生たちは、どれだけの楽しみを奪われてしまっただろうか。どうにもならない現状をぐっと飲み込んだまま過ごす大人たちがどれだけいるだろう。だからなのか、ヒドやイジンが語る台詞は、時折ド直球にヒットする。

 ヒドの第一印象は“うるさいくらいに真っ直ぐ”な高校生。正しい日本語ではないけれど、この未完成な言葉がナ・ヒドらしい。時代や大人の事情に振り回されるのは納得できず、夢を奪われたら取り返す。ばつんと揃えた短い前髪でズカズカとガニ股で進む道に後戻りの選択肢はない。走り出したらそのまま飛んでいきそうな躍動感。夢や憧れに対する嘘偽りのない眼差しが眩しすぎる。そんなエネルギッシュなヒドを120%で演じ切るキム・テリの豪快さは気持ちがいい。『お嬢さん』や『ミスター・サンシャイン』でも存在感が光っていたが、ロマンティック・コメディは本作が初挑戦のキム・テリ。期待を上回るナ・ヒドを披露し、夢中にさせてくれる。

 そしてヒドの夢はフェンシングの韓国代表ではなく、憧れの韓国代表選手コ・リム(ボナ)の“ライバル”になること。「あなたの世界にいく」と追いかけるのも、傘を直接渡さず屋上からふわりと降ろしてコ・リムに届ける描写も、思いが大きくなっていく過程の、心躍る高揚感が伝染してくる。2人のライバル関係は、間違いなく物語を熱くさせ盛り上げてくれるだろう。

 また、現在と1988年時代を行き来する本作では、“1位にならなければ意味がない”今の時代を生きるヒドの娘と“1位のライバルになりたい”当時のヒドの対比も描かれる。あの時はわからなかったけど、今だからこそ見えること。小さな気づきを所々で見つけたくなる作品だ。

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