『愛の不時着』ソン・イェジン×『賢い医師生活』チョン・ミド 名作になりうる『39歳』

韓国ドラマ『39歳』が名作になりうる理由

 日本における第4次韓国ドラマブームの火付け役となった『愛の不時着』に主演したソン・イェジン、2020年、2021年と2年連続で、韓国Netflixで最も観られた(Flixpatrol調べ、*1)ドラマ『賢い医師生活』の主演5人の紅一点、チョン・ミド、日本ドラマのリメイク『空から降る一億の星』(2018年)のキム・ジヒョンの3人が共演するドラマ『39歳』が2月16日よりNetflixで配信された。昨今のNetflix配信の韓国ドラマ同様、本国での放送直後に同日配信、3月24日まで全12話が配信される。脚本は、ソン・ヘギョとパク・ボゴムのドラマ『ボーイフレンド』(2018年)、映画『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年)のユ・ヨンア、演出は『それでも僕らは走り続ける』(2020年)のキム・サンホ。

韓国激動の90年代に青春を過ごした世代

39歳

 3人の役柄は、18歳で出会い不惑の歳を迎える40歳直前の39歳まで、親友として様々な境遇を共有してきた女性たち。『賢い医師生活』の5人のように、学生時代から20年来の友情を築く3人と周囲の人々の姿が描かれる。ソン・イェジンが演じるチャ・ミジョは、外見も内面も完璧な江南にある皮膚科医院長、チョン・ミドが演じるチョン・チャンヨンは演劇学校の講師で物語の牽引役、チョン・ミドの推薦で抜擢されたキム・ジヒョンが演じるチャン・ジュヒは、デパートの化粧品カウンターでBA(美容部員)として働いている。永遠に続くと信じていた友情が、とある宣告によって“期限つき”になってしまう。公私ともにある程度の経験を積んでも、20代30代の頃と同じように悩みや迷いが尽きない彼女たちの仕事と友情、そして人生の深みを描くドラマになるという。

39歳 | オフィシャル予告編 | Netflix

 現在39歳の彼女たちは、80年代初めに生まれた世代。『39歳』の脚本家ユ・ヨンアが手掛けたベストセラーフェミニズム文学の映画化『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年、キム・ドヨン監督)、1994年に14歳だった主人公を描いた『はちどり』(2019年、キム・ボラ監督)、そして前述の『賢い医師生活』の5人組など、この世代を描いた映画やドラマ、文学が多く登場している。現在Netflixで配信中のドラマ『二十五、二十一』も、1997年の韓国通貨危機によって影響を受けた世代の物語だ。以前に取材した韓国の映画プロデューサー、ファン・スージン氏は、ジェネレーションXからジェネレーションYの移行期に当たる80年代初期生まれの世代を描いた作品が多い理由をこう分析していた。「彼らを、多感な時期に激動の90年代を経験している世代として捉えているから。私の記憶にも、94年の聖水橋崩壊や95年の三豊百貨店の崩壊、97年の通貨危機は残っている。これらの出来事をどういう立場で見てきたかによって、現在の立ち位置も変わってくるので、物語になりやすい」(参考:『賢い医師生活』世界的人気の理由を探る 『応答せよ』シリーズから『はちどり』との関連まで)。韓国の激動の歴史を目撃し、影響を受けてきた世代がクリエイターとして映画界・ドラマ界で独り立ちし作品企画を立てるようになったことも大きく影響しているのだという。

良作・ヒット作が多い女性3人のシスターフッド

『恋愛ワードを入力してください~Search WWW~』
『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』
『Work Later, Drink Now(英題)』
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 もう一つの機運は、女性3人組の“シスターフッド”を描いた作品に良作・ヒット作が多いということ。検索ポータルサイト運営会社で働く年代も立場も異なる3人の女性を描いた『恋愛ワードを入力してください~Search WWW~』(2019年)、映像製作に関わる学生時代からの親友3人(+1名のルームシェアも新鮮だった)の『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』(2019年)、日本未上陸だがTVINGオリジナル作品『Work Later, Drink Now(英題)』(直訳題『酒飲みの都会の女たち』、2021年)などがある。ウェブトゥーン原作をドラマ化した『酒飲みの都会の女たち』は、酒豪の女性3人組の生態を描いたコメディが人気を博し、シーズン2の制作も決定している。旬な女優たちを揃えた『39歳』も、ここに挙げた作品群に並ぶような名作になることを期待せずにはいられない。

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