『鎌倉殿の13人』の“怖さと面白さ”を担う坂東彌十郎 北条時政の底知れなさ

坂東彌十郎、『鎌倉殿』の怖さと面白さを担う

 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)がスタートして、1カ月余りが経過した。2月20日放送の第7回「敵か、あるいは」では、坂東の巨頭・上総広常(佐藤浩市)が本格登場。北条泰時役の坂口健太郎をはじめとする第五次出演者も発表となり、さらなる盛り上がりに期待がかかる。

 ここまでの第6回までを振り返った時、主人公は北条義時(小栗旬)であり、物語の中心にいるのは源頼朝(大泉洋)に間違いないが、次点で異彩を放っているのが義時の父・時政(坂東彌十郎)である。

 初登場は、帝を警護する大判役の務めを終え、3年ぶりに京の都から戻ってくるシーン。馬に乗ったその姿は伊豆の豪族として威風堂々としている。だが、家に帰れば4人の子供たちを持つ一人の父。義時に京からの土産の買い方を指摘され、政子(小池栄子)には「もっと雅にいかないと」とだらしない身なりの注意を受ける。仲の良い三浦義澄(佐藤B作)に「垢抜けたな」と褒められると「そう?」と上擦った声で笑みを浮かべる。ここまでが1分弱の一連のシーンであるが、時政がいわゆるステレオタイプの愛すべき父であることが理解できる。

 トドメは宗時(片岡愛之助)、政子、義時、実衣(宮澤エマ)を前に、りく(宮沢りえ)を北条家の嫁に迎えることを告げるシーンだ。4人目だか3人目だか分からなくなるほどのさらなる継母に、子供たちは呆れ顔。ただ一人、父の新たな決断に前向きな宗時からの「これから是非、もう一花咲かせてください」という励ましに「咲かせたいと思います!」とすっかり上機嫌だ。言葉を選ばずに言えば、そのデレデレ顔は典型的な“スケベ親父”そのもの。『鎌倉殿の13人』は三谷幸喜作品として、コミカルとシリアスが表裏一体に共存しているが、このコミカルの要素の大部分を担っているのが、時政(と頼朝)と言えるだろう。

 ほかにも頼朝を匿っていることを伊東祐親(浅野和之)へと口を滑らせてしまったり。そんな一見頼りなさそうな時政が、三谷脚本のシリアス面を背負ったシーンが第6回にあった。頼朝の観音像を持って、宗時の死という“悪い知らせ”を受け止める義時と時政。すすり泣く義時に時政は「わしより先に逝くんじゃねえぞ。これからはお前が北条を引っ張っていくんだ」「三郎がやりかけていたことをお前が引き継ぐんだよ」と肩に手を置くのだった。

 さざ波の音とともに、時政に去来するのは、生前の宗時からかけられた「坂東武者の世を作る。そして、そのてっぺんに北条が立つ」という言葉。ここから義時は人が変わったように、頼朝に挙兵することを推し進める。義時自身が呪縛に囚われることになるのはまだ先の話だが、この時政が肩に手をかけたことが一つのきっかけのスイッチになったと捉えることもできる。

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