安田顕がいつも以上の怪演 『しもべえ』は現代おじさんの新しいロールモデルを示す?
『しもべえ』(NHK総合)の安田顕こそ、理想のおじさんだ。そう思えてならない。ずっと顔芸をしているし、すぐに白目を剥くし、第4話に至ってはアナコンダのように舌をずっとチロチロさせていたけど、それでも素晴らしい。全おじさんとおじさん予備軍は『しもべえ』を観るべきである。
唐突で驚かれた方も多いかもしれないので、あらためて説明していこう。「こんな青春ドラマが今まであったでしょうか」「もはや説明不可能な青春ドラマ。見るしかない!」とサブタイトルにつけられているように、『しもべえ』はちょっとおかしなドラマだ。
主人公は、元気で明るいけど勉強が苦手な女子高生、鴨志田ユリナ(白石聖)。母・康子(矢田亜希子)とふたり暮らしで、人情に厚いギャルの北島亜紀(矢作穂香)とは深い友情で結ばれている。ユリナと亜紀が町で不良に絡まれてしまったとき、何気なくダウンロードしたお助けアプリ「しもべのしもべえ」のことを思い出したユリナが、思わず「しもべえ!」と助けを求めると、どこからともなく中年のおじさん・しもべえ(安田顕)が砂煙をたてながらダッシュで駆けつけて、ものすごい力で不良たちを撃退してしまう。それからも、パンケーキ屋でお金が足りないときはお金を貸してくれるし、急に雨が降ってきたときは傘を持ってきてくれる(自分の分の傘は持ってこない)。しもべえは一言も喋らず、ユリナのピンチを救うと、不器用にニタッと笑うだけで去っていく(本人としては微笑んでいるつもりらしい)。しもべえ、お前は一体誰なんだ……?
安田顕がいつも以上の怪演を見せている一方、白石聖が真正面からぶつかっていて、ふたりが愛すべきコンビになっているのが見事というほかない。安田は白石のことを「ベタついてない。さらっとしてる」と評しているが(※1)、その感じは画面を通しても伝わってくる。 明るくて能天気なんだけど、どこかサッパリした感じが良い。
ギャルならではの義侠心をいかんなく発揮する矢作穂香、謎を抱える転校生・佐々木辰馬を演じる金子大地、優しいイケメンに見えて実は……という多田礼央を演じる『仮面ライダーセイバー』(テレビ朝日系)の内藤秀一郎もそれぞれ持ち味を発揮している。地元沖縄で“シーサーも振り向くほどの美女”と言われていた池間夏海の立ち姿も麗しい。恋があり、夢があり、屈折があり、努力がある。アプリから飛び出た(?)おじさんがマンガ的な表現を駆使して活躍するという突拍子もない設定のお話ながら、ちゃんと“青春もの”になっている。