『だから私は推しました』が可視化した、“地下アイドル”というインディーズカルチャー

『だから私は推しました』総論

 NHKのよるドラ枠で放送されていた『だから私は推しました』が完結した(9月21日午前0時40分から最終話再放送)。

 本作は、承認欲求の強いアラサー女子の遠藤愛(桜井ユキ)が、偶然、足を踏み入れたライブ会場で地下アイドルグループ・サニーサイドアップ(以下、サニサイ)のメンバー・ハナ(白石聖)と出会ったことから始まる物語だ。

 劇中では、ハナと愛、推しとアイドルオタクの心の交流を描いていく一方で、熱狂的なハナのファンでストーカー化した瓜田勝(笠原秀幸)と愛の戦いが描かれる。

 サニサイのアイドルと彼女たちを推すアイドルオタクたちの物語が進んでいく中、インターミッションとして挟み込まれるのは、警察に取り調べを受けている愛の姿。どうやら愛は瓜田を突き落としたらしく、何らかの理由で(サニサイとハナの絡みで)、愛は罪を犯したことが序盤に暗示される。

 つまり、アイドルを応援すること(推す)と瓜田と突き落としたこと(押す)がダブル・ミーニングとなっており、いわゆる地下アイドルの内幕モノと、ハナと瓜田と愛の三角関係を描いたクライムサスペンスが同時進行していくのだ。

 脚本を担当したのは森下佳子。00年代から活躍する森下は『白夜行』や『JIN-仁-』、近年は『義母と娘のブルース』(それぞれTBS系)といったヒット作を手掛ける人気脚本家。NHKでは連続テレビ小説『ごちそうさん』と大河ドラマ『おんな城主 直虎』などのオリジナル作品を手掛けている。森下は時間の流れを活かしたストーリーテリングを得意とする脚本家で、本作もサニサイの盛り上がりから解散までの短い時間を、推しとオタクの濃厚な物語として仕上げており、構成力の巧みさは健在である。

 映像も挑戦的で、サニサイのイメージカラーである黄色に寄せたカラコレ(カラー・コレクション)と間接照明を強調した奥行きのないベタッとした画面構成は、地下アイドル現場に満ちているアンバランスな狂騒をみごとに体現している。

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