『カムカム』るい編のラストは安子編と対照的な形に 「I hate you」を取り返す親子の抱擁

『カムカム』るい編の“ラスト”は幸せな形に

 地道な努力が苦手で、毎朝15分のラジオ英語講座を聴くという習慣も手放してしまったひなた(新津ちせ)。しかし、英語に興味を持つきっかけとなった初恋の相手・ビリー(幸本澄樹)と上手く話せないまま別れの時を迎え、ひなたは後悔の念に苛まれる。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第70話は、初めての挫折を経験した娘にるい(深津絵里)が寄り添った。

 ビリーが去った後、ひなたは漫画本や教科書に埋もれた英語会話のテキストを取り出す。るいが書いてくれた筆記体の名前、錠一郎(オダギリジョー)お手製の出席カード。英語を勉強したいという自分に協力してくれた両親を裏切ってしまった罪悪感や、あのままサボることなく続けていたら……という後悔が一気に押し寄せた。そんな自分に対するイライラを、ひなたは帰ってきた両親にぶつけてしまう。

 「もう飽きた」なんて思ってもないことが口から出て、おやつの回転焼を払い除けたひなたを叱ったのは意外にも錠一郎だった。幼い頃に戦後の焼け野原で飢餓を経験した錠一郎だからこそ、食べ物を粗末にするひなたが許せなかったのだろう。優しい父親が初めて声を荒げたことでハッと我に返るひなただったが、素直に謝れず家を飛び出す。

 一念発起して始めたことを目の前の誘惑に負けて諦めてしまったり、そんな自分に嫌気が差したり、人知れず失恋し、親に八つ当たりしてしまったり。11歳のひなたが経験したことは、多くの人が既視感を抱くものだった。切なくて胸がキュッとなるような少し恥ずかしい思い出。誰もがいつしか忘れて大人になるけれど、るいにはひなたの気持ちがよく理解できた。

「子どもは子どもで色んなことを抱えているもんや」
「なんで分かるん?」
「お母ちゃんも昔、子どもやったから」

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