『鎌倉殿の13人』小栗旬の義時がどんどん魅力的に 4年7カ月にも及ぶ源平合戦の始まり

『鎌倉殿の13人』源平合戦の始まり

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第4回「矢のゆくえ」。治承四(1180)年8月、源頼朝(大泉)の一党は伊豆国の目代・山木兼隆(木原勝利)を討って初戦を飾るべく戦支度を始めるも、思うように兵が集まらない。そんな中、対岸の江間館で暮らす八重(新垣結衣)が北条義時(小栗旬)に声をかける。

 第4回の見どころは多々あったが、小栗旬演じる北条義時の強い意志が感じられる2つのシーンに着目したい。1つは相模の豪族・土肥実平(阿南健治)の発言から、豪族を味方につけるには領地の安堵と信頼が必要だと気づいた義時が頼朝(大泉洋)に掛け合うシーンだ。義時から頼朝の方から歩み寄ることを提案され、頼朝は「わしは源氏の棟梁じゃ。なぜ坂東の田舎者にそこまでせねばならんのだ」と断った。義時は黙り込む。その表情は失望や呆れにも見えるが、腹をくくったのか腰をあげるとグッと頼朝に近づく。頼朝ににじりよった際の義時の佇まいは力強い。頼朝に苦言を呈する覚悟が決まっている。

「確かに我らは坂東の田舎者。しかしながら、今はその坂東の田舎者の力を合わせねばならぬ時でございます。彼らあっての佐殿。それをお忘れなきよう」

 頼朝と対峙する義時の射抜くような鋭い眼光は、第3回で堤信遠(吉見一豊)を前に見せた静かな怒りにも似た強さがあった。

 もう1つは、八重との場面。頼朝が北条側にいるかぎり、八重は味方だと考えていた義時だが、八重は頼朝の挙兵を父・伊藤祐親(浅野和之)に伝えていた。八重は江間館を去る義時に「北条も愚かな。佐殿の口車に乗せられて無謀な戦を始めるとは」と言う。その言葉を、義時はなんとも言えない表情で聞いていた。失望したようにも、憤りを覚えたようにも、憧れていた人の言葉に傷ついたようにも見える。だがここでも義時は、意を決して振り返り、自身の思いをまっすぐに八重にぶつけた。

「坂東は平家に与するやつらの思うがまま。飢饉が来れば多くの民が死にます。だから我らは立つのです!」

 どちらのシーンでも、義時の誠実な言葉が相手の心を動かした。頼朝は坂東の武士たちに歩み寄り、彼らの心を捉えた。八重は山木の動きを頼朝に伝えるため、北条館に向けて矢を射った。

 小栗演じる義時は、困ったり戸惑ったりしている印象が強いが、時折見せる鋭い顔つきにハッとさせられる。今はまだ、頼朝や兄・宗時(片岡愛之助)が作った流れに身を任せている状態かもしれないが、第4回の義時の言動は自発的で、彼の意志で頼朝を支えていること、戦に勝つ志を掲げていることが伝わってきた。一本の矢が放たれたその瞬間、4年7カ月にも及ぶ源平合戦が始まったが、そのきっかけは義時の芯の通った言葉にあると感じる。

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