『鎌倉殿の13人』第1回から垣間見えた勝者の悲劇 三谷幸喜の演劇的構成が光る

『鎌倉殿の13人』三谷幸喜の演劇的構成

「姫、振り落とされないように気をつけて!」

 迫りくる追っ手から逃れようと平原に馬を走らせる北条義時(小栗旬)。後ろの赤い着物の姫は義時が将来を誓い合った相手? なんてロマンティック!

 ……と胸を躍らせた瞬間から、わたしたちは彼の手の上で踊らされていたのだ。

 2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。脚本を手掛けるのは『新選組!』(2004年)、『真田丸』(2016年)に続き大河3作目となる三谷幸喜。冒頭から仕掛けてくれたその人である。ここでは第1回「大いなる小競り合い」を振り返りながら、脚本に散りばめられた作品を読み解くヒントについて考えていきたい。

 初回を視聴し、非常に演劇的な構成だと感じた。その大きな要因のひとつが“舞台と視点の固定化”だ。第1回に関していえば、物語の約9割が義時の父・北条時政(坂東彌十郎)の屋敷内で展開し、視聴者の視点が主人公・義時の主観と重なるよう撮影されていた。また、源頼朝(佐殿/大泉洋)を屋敷にかくまっていることを父に悟られまいと義時が奔走する場面は、三谷氏が得意とし、これまで彼の舞台作品で何度も描かれてきた“1番現れてほしくない人が最悪のタイミングで登場する”鉄板シチュエーションである。

鎌倉殿の13人

 さらに、初出時には10代前半である義時役に子どもの俳優を使わず、最初から39歳の小栗旬が演じていたり、平安末期の言葉のテイストを取り払い「首ちょんぱ」「ちょっと待って」など、ほぼ完全な現代口語でせりふがやり取りされる脚本からは、史実には忠実に、それ以外は柔軟にという『新選組!』や『真田丸』とも共通する三谷幸喜の大河ドラマへの向き合い方が見て取れる。

 登場人物の紹介で終わりがちな大河初回において、人間の持つ多面性がはっきり描き出された点にも注目したい。

鎌倉殿の13人

 そのモードにおいて初回で特に強いフォーカスが当てられたのは2名。1人は北条時政、もう1人は佐殿こと源頼朝。どこかお茶目で調子よく、好きな女性の前ではデレデレで、肝心なところで抜けているようにも見えた時政が、舅である伊東祐親(浅野和之)と刃を交える決を下した際に一瞬で醸したあの凄み。流石、歴史の渦の中で執権政治の要へと成りあがっていく人物だ。

 源頼朝はさらに複雑で、掴みきれない下地の上に、さまざまな色が重ね塗られる。祐親の娘・八重(新垣結衣)との間にできた子・千鶴丸が死んだ(殺された)と聞かされた時は「仕方がない、それがあれのさだめであった」と達観したように義時に語るが、その直後、近しい部下に「伊東祐親、決して許さぬ!」と憤怒の様相を見せ、冷酷な顔で祐親の殺害を命じる。と思えば、北条の屋敷から逃げ出す際、女性物の着物をまとっただけでなく、しっかり頬に紅まで入れて“姫”になりきり「はぁい」と甲高い声で返事をする可笑しみ。馬鹿真面目なのかどこか状況を楽しんでいるのかまったくわからない。おそらく今後も何を考えているのか読み切れない人物として、頼朝は義時たち北条家を翻弄するのであろう。その未来をはっきり提示する鎌倉幕府・初代将軍の描かれ方であった。

 さて、本作の主人公である北条義時とはどういう人物だったか。



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