『アバランチ』はドラマの可能性を拡張 綾野剛演じる羽生は何を守ろうとしたのか?

『アバランチ』はドラマの可能性を拡張

 この記事を読んでいる方は、すでに『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)最終話をご覧になっているという前提で書くので、まだ観ていない人は先に最終話を視聴することをお薦めします(以下、ネタバレあり)。

 すべての答えがそこにはあった。アバランチとは何者なのか? 2カ月前、突如、私たちの前に姿を現した覆面の集団は、最後の歩みを刻んだ“Episode Final”で意外なほどあっけなく、まばゆい光を放って消えた。深い余韻を残して。

アバランチ

 藤田(駿河太郎)の撃った弾道は羽生(綾野剛)の身体を撃ち抜き、羽生はその場に倒れる。藤田の回想。「君にしかできない国を守るための特務だ」。3年前、大山(渡部篤郎)から告げられた極秘任務は、日本版CIAを設立するための偽装テロ。生き残ったのは自分ともう1人。爆発の瞬間、身を挺して藤田が羽生を守った。「自分だけが犠牲になれば、俺や山守さんを守れると思ってません?」と羽生。火傷の傷跡で藤田の表情が読めない。「二度と俺の前に現われるな」。逃げるようにその場から立ち去る。藤田は羽生を殺せなかった。

アバランチ

 「これが父さんの正義だったんだね」。西城(福士蒼汰)と父・尚也(飯田基祐)。西城は、尚也が武器を横流しした事実を公表すると迫る。それぞれの正義を背負って対峙する父子。山守(木村佳乃)と桐島(山中崇)の処分が決まる。桐島は内調国際部のトップ、山守は内調に戻り、アバランチのメンバーの助命を嘆願する。郷原総理(利重剛)が臨席する会場で羽生たちが取った行動は、まさかの投降。間隙を突くようにスミレ(仁村紗和)のライフルが羽生を捉える。薄れゆく意識の中で羽生は手を伸ばす。

アバランチ

 「もう一度信じてみようぜ」「正義の力ってやつを」。正義が何かという空虚な問いを繰り返すことに意味はない。一点言えるのは、正義は何を守るかによって決まるということだ。守りたいものの数だけ正義があると言ってもいい。羽生たちが守りたかったのは「ささいな日常」。他愛もないことで笑い、身近な不幸に心を痛め、小さな喜びを分け合う。そんな日々の営み。大げさに言えば「人生」だろうか。

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