『カムカム』を彩る重要な要素に ジャズの巨匠ルイ・アームストロングとは?

『カムカムエヴリバディ』とジャズの関係

「ルイ・アームストロングはジャズの街・ニューオーリンズに生まれたジャズ・トランぺッターの巨星です。デューク・エリントンらのスウィング期の前、今でいうディキシーランド・ジャズのスタイルを作ったひとりであり、独特のハスキー声による歌唱でも人気を集め、スキャット唱法のオリジネイターとしても知られています。彼の代名詞とも言える楽曲『What a wonderful world』は誰でも一度は耳にしたことがあるでしょう。

 有名な愛称「サッチモ(大きな口)」は、1932年に初のヨーロッパツアーでイギリスを訪れた時に音楽記者から呼ばれたのが由来です。そして彼が最初に「On the Sunny Side of the Street」を録音したのは、2度目にヨーロッパを訪れた1934年のパリにおいて。パリといえば60年代頃にアメリカのジャズミュージシャンの移住が増え、『人種差別がなく、自由な空気がある』(芸術家に対するものだったかもしれませんが)と言われていた土地です。当時のアメリカは差別によりルイ・アームストロングでさえ、白人と同じホテルに泊まることや同じ入口から建物に入ることもできなかったそうですが、その一方で彼は『ユーモラスな表現で白人に媚びた』とも言われています。その彼はパリで何を思い、どんな気持ちで『On the Sunny Side of the Street』を歌ったのでしょうか。戦後、稔を失って、困難な状況に置かれた安子とるいの2人と、アームストロングの心情は色々と重なる部分が多いような気がします。さらに本楽曲は初出時、大恐慌下のブロードウェイで女性として初めて成功したとされる作詞家ドロシー・フィールズの詞を、ロシアからのユダヤ系移民2世のハリー・リッチマンが歌唱しました。その文脈も考えると、敗戦国の日本人“ルイ”と曲がどう関わっていくのかが気になりますね」

 これからも重要な局面で使用されると思われる「On the Sunny Side of the Street」。安子や稔への思いも馳せながら、ルイ・アームストロングの楽曲を、ジャズを視聴と合わせて聴いてみてはいかがだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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