『カムカム』を彩る重要な要素に ジャズの巨匠ルイ・アームストロングとは?

『カムカムエヴリバディ』とジャズの関係

 戦争という理不尽なものによって大切な人たちの命が奪われた第4週を経て、未来に向けての一歩一歩が描かれた『カムカムエヴリバディ』第5週。安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)の娘・るいはすくすくと育ち、安子と一緒におはぎを売り歩くまでに成長。初めて喋った言葉が「カムカムエヴリバディ」だったのをそのままに、安子とラジオ『英語会話』を聴き続けている。

 安子、稔、るいを繋ぐ重要なキーワードは、ラジオであり英語であるが、もうひとつ重要な要素がある。るいの名前の由来にも関係するジャズだ。

 安子と稔の“初デート”、喫茶店「Dippermouth Blues」で流れていたのがルイ・アームストロングの「On the Sunny Side of the Street」。稔が出征前に安子に伝えた、「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける。自由に演奏できる。僕らの子供にゃあ、そんな世界を生きてほしい。ひなたの道を歩いてほしい」の言葉は、まさに「On the Sunny Side of the Street」を愛した稔だからこそ出てきたものだろう。

 制作統括の堀之内礼二郎氏が、「On the Sunny Side of the Street」について、「安子、るい、ひなたのヒロインたちに寄り添い背中を押す楽曲として、作品全体の象徴のような曲」(参照:『カムカムエヴリバディ』の重要な“3曲”とは? 細部までこだわった制作陣の作品への愛)と語っているように、作品にとって欠かせない一曲となっている。

 自身もジャズプレイヤーであるライターの小池直也氏は、「On the Sunny Side of the Street」が生まれた背景、ポイントを次のように語る。

「大恐慌下の1930年2月25日にブロードウェイのミュージカル『ルー・レスリーのインターナショナル・レビュー(Lew Leslie’s International Revue)』が上演されました。多くの予算をつぎ込んだ期待作だったそうですが、内容はあまり評価されなかったようです。結局、作品は忘れ去られてしまったのですが、劇伴曲として製作された「On the Sunny Side of the Street」と「Exactly Like You」はチャートインするほどに人気となり、現在ではジャズスタンダードとしても定着、数え切れないほど演奏され続けています。「On the Sunny Side of the Street」の歌詞を紐解いていくと、浮かない世の中を陽気に歌い上げる内容です。注目してほしいのは、歌に入る前に省略されがちな『ヴァース』と呼ばれる前歌の部分です。

Walked with no-one and talked with no-one,
And I had nothing but shadows.
Then one morning you passed
And I brightened at last.
Now I greet the day, and complete the day,
With the sun in my heart.
All my worry blew away
When you taught me how to say:

 つまり、この楽曲の主人公は特別な誰かと出会うことによって“ひなたの道”に出ようと決意するのです。まさに、『カムカムエヴリバディ』における安子のことであり、娘・るいに当てはまる内容だと思います」

 そして、「On the Sunny Side of the Street」の歌い手であり、「るい」の名前の由来になったのが、ジャズ界の巨匠ルイ・アームストロング。小池氏は、ルイ・アームストロングについて次のように解説する。

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