『日本沈没』第1章が完結 副題「希望のひと」に託されたメッセージ

小栗旬主演『日本沈没』第1章が完結

 災害は突然やってくる。何の前ぶれもなく関東沈没は田所(香川照之)の予想を上回るスピードではじまった。天海(小栗旬)と椎名(杏)が警鐘を鳴らし、一斉避難が開始されたタイミングの出来事だった。

 『日本沈没-希望のひと-』(TBS系)。前話では大地震から逃げる天海の顔のアップで終わったため、続きが気になった視聴者も多かっただろう。第5話は国民に向かって話す東山総理(仲村トオル)のシーンから始まる。「首都圏を含む関東地区の沿岸部が沈没するという非常事態によって我が国は甚大な被害を受けました」。いきなりの過去形。東京スカイツリー周辺を含む沿岸部が水没し、死者・負傷者は把握できていない。

 さらなる第二波に備えて警戒を強める官邸と未来推進会議のメンバー。悲観的な声を打ち消したのは、ほかならぬ田所だった。「関東沈没は最小限の被害で終息した。そうとしか考えられん」。関東地方を海面下に引き込んだ海底プレートは地震によって断裂し、これ以上悪化することはないという。安堵しつつ、その言葉を鵜呑みにしていいのか、もしかしてもっと恐ろしい災害が待ち受けているのではないかと一抹の不安もよぎる。

 第1章完結となる第5話では、本作の持つメッセージ性があらためて浮き彫りになった。官僚の天海を主人公に、霞ケ関の内幕を日曜劇場特有の粘度高めの人間模様と合わせて描く政治サスペンスであり、災害シミュレーションドラマとして、映画『シン・ゴジラ』との類似点を指摘する声も多かった。これに対して、第4話にして関東沈没が現実となったことにより、本作の人間ドラマとしての側面が前面に出てきた。未曽有の災害がもたらすのが都市の惨状だけではないことを、災害列島の日本に住む私たちは知っている。災害を契機にふだん水面下に隠れていた人間同士の反目やいさかい、社会のひずみが噴出するパニックドラマ特有の構造は今作にも受け継がれている。それらの状況を客観的に風刺し戯画化することによって、単なるリバイバルを超えた2010年代ならではの批評性を持ちえたのが『シン・ゴジラ』だった。

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