杉野遥亮の真価はコメディで発揮される!? 過去主演作や『恋です!』から演技の魅力を分析

杉野遥亮の真価はコメディで発揮される!?

 同事務所の菅田将暉から「トップコートのリーサル・ウェポン」とあだ名をつけられた役者・杉野遥亮。2016年のドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)で役者デビューを果たした彼は、その後、映画『キセキーあの日のソビトー』(2017年)に出演したことで少しずつ認知を広めた。

 2021年には映画『東京リベンジャーズ』やドラマ『直ちゃんは小学三年生』(テレビ東京系)、『僕の姉ちゃん』(テレビ東京系)など立て続けに出演。現在は、水曜ドラマ『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系)で、杉咲花とのW主演でメインキャスティングされている。着実に認知度&人気を高めている杉野。出演作が途切れない理由はどこにあるのか。

 筆者は、コメディでこそ彼の真価が発揮されると感じている。そう気づくきっかけとなった2021年の出演作『直ちゃんは小学三年生』、『僕の姉ちゃん』、そして『恋です!』から、役者・杉野の演技の魅力を分析したい。

杉野遥亮のコメディ力が爆発『直ちゃんは小学三年生』

 『直ちゃんは小学三年生』(テレビ東京系)は、ひと目見ただけで異色作だとわかる。杉野演じる直ちゃんをはじめ、明らかに全員“見た目は大人”なのに、ランドセルを背負っているのだ。

 物語冒頭部分で「このドラマの登場人物は誰がなんと言おうと小学生です、ご理解ください」と注意書きが出る。大人が全力で小学生を演じる設定、これまでありそうでなかった見せ方をついてきた。その心意気だけで見たくなる作品である。直ちゃんのほか、みんなよりもお金持ちで成績も良い少年・きんべ(渡邊圭祐)や、物腰おだやかだけれど周囲からイジられがちな少年・山ちょ(竹原ピストル)、そして貧乏なことを気にしている少年・てつちん(前原滉)など多彩な小学三年生が登場する。見事に誰ひとりとして“本物の”小学生は出てこない。

 1話30分・全6エピソードと決して長くない物語だが、見応えはある。直ちゃん、てっちん、山ちょで「誰がいちばん大きい音を出せるか」を競い合うメンコ遊びをしていたら、なぜか山ちょだけ順番を外されてしまう流れなど、いわゆる“小学生あるある”が詰め込まれているのだ。その後、実はこのメンコは交通系ICカードであることが判明。「お金が入った魔法のカード」と勘違いした一行が、駄菓子屋でそれを使おうとするシーンなど、あるあるすぎて泣けてくるほどだ。キャストやスタッフ同士で“小学生あるある”を出し合う会議などを重ねたのでは?と思うほど、どのエピソードもリアルすぎる。

 筆者は本作を観て、直ちゃんを演じている杉野の「コメディ力」が爆発した素晴らしいドラマだと痛感した。前述したメンコのやりとりも相当面白かったが、ぜひとも触れておきたいのは第3話である。

ドラマ25 直ちゃんは小学三年生 | 第3話 | 主演 杉野遥亮 | テレビ東京

 第3話では、堀田茜演じる鎌田という女子生徒の先導で「男子と女子のどちらが学級委員長をやるか」をテーマに、クラス内でちょっとした揉め事が起こる。男子は男子、女子は女子で派閥を作りがちだよな……とまたもや視聴者は“小学生あるある”に懐かしさを抱くことに。そして公園で直ちゃん、てっちん、きんべの3人でキャッチボールをしていたところ、てっちんが投げたボールを直ちゃんが取り損ねてしまった。そこにたまたま通りかかった塩山(水嶋凜)にボールを投げ返してもらうのだが、なかなか良い球を放るのである。直ちゃんはそこで、ランドセルのキーホルダーなどから彼女も野球が好きなことに気づく。

 そんな塩山が気になって、鎌田と2人で遊んでいる神社の境内までついてきた直ちゃん。2人の様子を鳥居の陰から見守っている様子が、なんともおかしい。これは杉野が生まれながらに持ち合わせている佇まいや空気感が醸し出すものだ。ただ「見ている」だけなのに、こうも可愛く面白く見せられるのは彼しかいないのではないだろうか。

 そして、直ちゃんは塩山をキャッチボールに誘う。「あんなすげえ球投げるやつとしたことねえんだよ」のセリフが、これまた面白い。独特のリズム、テンポ感……。笑いには間やリズムが大事だと聞くが、杉野は、コメディ作品に欠かせない“間合い”のようなものを先天的に備えているとしか思えない。

 『直ちゃんは小学三年生』には、他にもピックアップしたいエピソードが満載である。ただコメディ一色なわけではなく、「性」や「男女平等」にも切り込んだ学び深い作品。未視聴の方にはぜひおすすめしたい。

『僕の姉ちゃん』で確信した! こんな弟が欲しいランキングNo.1

 Amazon Prime Videoで配信中のドラマ『僕の姉ちゃん』。益田ミリ原作のコミックを実写化した作品で、黒木華が演じる姉・ちはると、杉野が演じる弟・順平がメインキャストである。

テレビ東京「僕の姉ちゃん」特別映像|黒木華×杉野遥亮 2022年テレビ東京にて放送予定

 ちはるの、切れ味たっぷりで軽快な名言が魅力のひとつであるドラマだが、ここでは順平を演じている杉野にとことん注目する。本作では、まさに「こんな弟が欲しいランキング」で堂々の第1位を受賞してもおかしくないほど“理想の弟像”を体現した、杉野の弟っぷりを紐解いていきたい。

 このドラマでは、両親ともに出張している関係で、一時的にふたり暮らしをしている姉弟の様子が描かれる。朝は自宅のシーンから始まり、ふたりはそれぞれの職場へ出かけていって、仕事をしたり理不尽な目に遭ったりして、夜になったら帰宅する……といった、定番の流れに沿って進んでいく。ちはるは毎日さまざまな“理不尽”にさらされているらしく、愚痴まじりに帰宅することも珍しくない。そんなとき、世の弟なら「あ〜うるさい、うるさい」と一蹴しそうなものだ。それを、杉野演じる順平は「何かあったの?」と自然に聞いてくれる。

 ただ「聞いている」だけなのに、姿勢から相槌からすべてが完璧なのだ。こんな弟ならなんでも話したい、頼むから聞いてくれ!と懇願したい。ただそこにいるだけで、演じるキャラクターの人間性をも表現して見せる杉野。菅田将暉に「トップコートのリーサル・ウェポン」と言わしめたのも納得の、神からのギフト(=演技力、表現力)ではないだろうか。

 このドラマは1話30分・全10エピソード。回を重ねるごとに杉野の「弟っぷり」に磨きがかかってくるので、ぜひ最後までじっくり観てもらいたい。筆者おすすめのエピソードは8話〜10話である。とくに10話の、順平がちはるに対して「手巻き寿司の話、早々に飽きた?」と鋭くツッコむシーンなんて、絶品だ。杉野の天性の“コメディ力”も味わえる、至極の作品である。

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