『おかえりモネ』最終回で描かれた希望と願い 清原果耶×坂口健太郎の抱擁は未来の象徴に

『おかえりモネ』最終回で描かれた希望と願い

 東日本大震災を背景とした『おかえりモネ』(NHK総合)に、一つ答えを見出すとすれば、それは「許す」ということだと思う。相手を、過去を、自分を。

 安達奈緒子が繊細かつ緻密に紡いできた半年間の物語は、百音(清原果耶)と未知(蒔田彩珠)、耕治(内野聖陽)と新次(浅野忠信)、さらには「あの時いた者といなかった者」、「島の者と外から来た者」、「大切な人を失った者と失っていない者」と様々な視点から描かれている。共通しているのは、誰もがその心に「痛み」を抱えていることだ。

 百音が人の役に立ちたいという思いから気象予報士を目指すことになったのは、3月11日に気仙沼にいなかったのが根本にある。地震から数日後、島に戻った百音を待っていたのは、未知や亮(永瀬廉)からの寂しげな視線。そこから百音は二度と彼らとは同じ思いを共有できないのだと隔絶を感じてしまっていた。

 最終回となる第120回で、百音はあの日からずっと閉ざしたままだったアルトサックスのケースを開ける。そこに入っていたのは、中学校の卒業式で開催されるはずだったコンサートのパンフレット。日付は3月12日。何もできずに無力だと思っていたあの頃の自分に戻ってしまう、そんな思いから百音はケースをずっと開けられずにいた。

 「戻ってたまるかって思ったよ」「もう何もできないなんて思わない」ーー百音のしぶとさと強さ、それは気仙沼の人々やサヤカ(夏木マリ)を見て教わったことでもある。未知と亮が百音にかける「おかえり」は、あの日体育館で言えなかった言葉。百音が過去の呪縛から解放され、止まっていた時計がやっと動き出した瞬間だ。それぞれの心の傷は一生癒えないし、過去の自分を許すことはできないのかもしれない。それでも、互いが分かりたいと相手を思いやっていれば、いつかは笑いあえる日がきっとくる。百音の「ただいま」をスイッチに、自然と手を繋ぎ泣き笑いを浮かべる幼なじみたちを見てそう思えた。

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