『カムカムエヴリバディ』で“朝ドラ史上最高齢ヒロイン”に 深津絵里の“母親像”への期待

朝ドラ史上最高齢ヒロイン、深津絵里

 2021年度後期放送のNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は「NHKのラジオ英語講座」を題材に、祖母、母、娘の3世代のヒロインをそれぞれ上白石萌音、深津絵里、川栄李奈の3人が演じる。3人の登場人物を3人の女優が別のヒロインとして演じるのは朝ドラ史上初とのこと。

 ストーリーは、昭和、平成、令和という100年にわたる3つの時代を祖母、母、娘がバトンをつないでいくというもの。和菓子店で生まれ育ち、戦争の試練を味わう祖母の安子(上白石萌音)、生き別れた母親を憎みながらも、ジャズで道を切り開く母のるい(深津絵里)、時代劇の世界に憧れる娘のひなた(川栄李奈)の3人の人生に、「NHKのラジオ英語講座」の歴史が併走する。

  かつてはフレッシュな10代後半から20代前半の若手女優をオーディションでヒロインに選ぶ傾向が強かった朝ドラだが、近年は実績が重視されているようで、『カーネーション』は29歳だった尾野真千子、『まんぷく』には32歳の安藤サクラ、『スカーレット』には30歳の戸田恵梨香が選ばれている。『なつぞら』の広瀬すず、『おちょやん』の杉咲花、『おかえりモネ』の清原果耶らも年齢は若いが、それぞれ十分なキャリアを積んだ後の起用だった。

 その意味では、今回の上白石萌音、深津絵里、川栄李奈というキャスティングは、近年の朝ドラの実績重視というトレンドにぴったりあてはまっている。3人に共通するイメージは、透明感、安心感、芯の強さなどだろうか。もちろん、そのようなイメージは彼女たちのたしかな演技力に裏打ちされたものだ。“朝の顔”としてふさわしい3人と言えるだろう。

 上白石萌音と川栄李奈は3000人以上のオーディションから選ばれたが、唯一直接オファーされたのが、意外なことに今回が朝ドラ初出演で初主演となる深津絵里である。現在48歳の深津だが、上白石、川栄と並んでもまったく遜色のない透明感とデビューした頃から変わらぬフォルムをキープし続けているのにあらためて驚かされる。CMなどではよく見かけるのでまったくそんな気がしないが、連続ドラマへの出演は木村拓哉が史上最年首相を演じた『CHANGE』(フジテレビ系)以来13年ぶりというのだからこれもまた驚きだ。

 なお、深津は主人公の晩年を別の女優が演じるパターン(『おしん』の乙羽信子、『すずらん』の倍賞千恵子、『カーネーション』の夏木マリ)を除けば、47歳だった『芋たこなんきん』の藤山直美を抜いて朝ドラ史上最高齢ヒロインとなる。なお、娘役と一緒に登場するダブルヒロインの『京、ふたり』の山本陽子も同じ48歳(同じくダブルヒロインの『おんなは度胸』の泉ピン子は45歳、『青春家族』のいしだあゆみは41歳)。余談だが、最年少は16歳だった『てるてる家族』の石原さとみだった。

 制作統括の堀之内礼二郎氏は、るい役のキャスティングにあたり、「強さと弱さを抱えた女性を魅力的に演じられる役者さん」をチームで考え抜いた末、「さまざまな作品で新しい女性の価値観や生き方をみせてくれた深津さん」にたどりついたと振り返っている。

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