『天国と地獄』に続き、柄本佑に思わず肩入れ 『わたとな』で不憫に見える好演
筆者に関していえば、観ていてお腹が痛くなったほどだというのは冒頭で述べたとおり。それくらいに両者の対照的な演技は見事な化学反応を起こしているのだ。特に、柄本が俊夫の“不憫さ”を示すシーンとして、佐和子が「不倫」の一言を口にした際に見せる凍りついた表情が秀逸。それに、俊夫も元々は漫画家であり、現在は“描けていない”状況にある。彼は佐和子の仕事や生活全般を支える日々だ。これらの事実も、彼が不憫な存在である印象を後押しているだろう。念のために繰り返すが、妻を裏切っているこの男が前提として悪い。
振り幅大きく、これまでにさまざまなタイプの作品・役に挑み続けてきた柄本。彼が演じる、どうにも肩入れしてしまうキャラクターといえば、特に『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系)での“りっくん”役が記憶に新しいところだ。主人公(綾瀬はるか)の“ヒモ”とはいえ、家事などに勤しむ姿はどこか本作で演じる俊夫役とも近しい感触がある。物語の主軸となるサスペンスフルな展開に巻き込まれ翻弄されていく姿は、多くの視聴者の声援を集める、まさに好演と呼べるものだったのではないだろうか。
『天国と地獄』で演じたのもカギを握る人物ではあったが、登場シーンは限られていた。それに対して本作は、柄本佑が物語の中心で右往左往する姿を見せるという、“柄本佑劇場”が完璧に堪能できるものとなっている。彼の演技こそが、本作をスリリングなものとしていると思う。
■公開情報
『先生、私の隣に座っていただけませんか?』
新宿ピカデリーほか全国公開中
出演:黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン
脚本・監督:堀江貴大
劇中漫画:アラタアキ、鳥飼茜
主題歌:「プラスティック・ラブ」performed by eill
製作:「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:C&I エンタテインメント
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(c)2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会
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